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旅先での健康管理

今週末から年明けにかけて、多くの人が休暇旅行に出かけることだろう。今年は一番安全だと思われる日本でノロウイルスが異常に流行しており、ホテルの宿泊客が集団感染した事例も複数起きているほどだ。数個のウイルスで感染するほど感染力が非常に強いのが特徴で、しかも今年は感染力がことさら強いウイルスが主流となっているという。このウイルスは一方で発症しにくいとも言われる。つまり感染しても本人が知らないうちにウイルスを撒き散らしていることも考えられるわけだ。 海外では生ものを食べるべきではないと言われるが、今年は日本でも生ものを食べることに慎重にならなければいけない事態となっている。特に生カキは食べるべきではない。患者が多く発生していることで、大量のウイルスが海洋に流れていることが予想される。トイレから流された排泄物は下水処理場で浄化されるものの、ノロウイルスは除去されることなく素通りする。 カキの養殖業者もかなり神経質になっており、無菌処理を慎重に行なっているところも多いが、残念ながら完全とはいえない。今に限ったことではないが、保健所によっては、管内の飲食店に対して生カキを供しないように指導しているところもあるという。元々生カキはノロウイルスの感染リスクが最も大きな食品であることは間違いない。 さて、この時期を海外リゾートで過ごす人も多いだろう。ノロウイルスに限らず食中毒を含む感染性胃腸炎のリスクは特に熱帯地方では非常に高い。生ものを避けていても、水割りの氷でやられた人もいる。果物でもカットして売っているものも危険だ。ただし自分でカットして食べるのであれば、果物は安全度が高い食品といえる。 デング熱やマラリアにも注意が必要だろう。リゾートホテルでは蚊に対する対策が講じられているところが多いが周辺の村落部にも蚊がいないとは限らないので、特に夜間の外出に際しては蚊に刺されないように十分に注意したい。旅行後も発熱など体調を壊すことがあれば、医師には旅行後であることを伝えることが大切だ。何も伝えなくてマラリア治療が手遅れになることも珍しいことではないが、マラリアであることが診断できれば、治療は比較的易しい。 旅行に際しての注意は、  1、無理な計画で体力を落とさないこと。(十分な睡眠が大切) 2、生ものには手を出さないこと。 3、氷に注意! 4、手洗いの励行。 5、当然のことながら水道水は飲まないこと。 6、虫に刺されないようにすること。 7、淡水の川や湖では泳がないこと。(寄生虫の皮膚からの侵入予防) 8、急な日焼けを避けること。(背中の皮がすべて剥けてしまい救急車で運ばれた若い女性もいる)日焼けは火傷だという認識を持つこと。 無理をせず、最低限の注意をして楽しい休暇を過ごして欲しい。

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ノロウイルス感染急増

ノロウイルスが原因とみられる感染性胃腸炎が、今年は例年にも増して猛威をふるっている。報道で日本での流行については既に知っている人も多いだろうが、私自身、香港でもかなり増えているのではないかと感じている。「お腹に来る風邪」とも言われ、重症化することは少ないが、免疫力の落ちた高齢者にとっては命取りとなるので、十分な注意が必要だ。 感染性胃腸炎を起こすウイルスには、ノロウイルスの他にもロタウイルス、エンテロウイルス、アデノウイルスなどが知られているものの、乳幼児は別にしてウイルスによる感染性胃腸炎の主流は何といってもノロウイルスだ。 ノロウイルスは日本では冬場に患者数のピークをつくるが、これは生カキの消費量の増加ときれいに相関する。つまりカキに含まれるノロウイルスがその生食によってヒトに取り込まれ、腸管内で増殖して発症するわけだ。香港では日本ほど季節性はないが、患者の発生は非常に多い。 ノロウイルスで特に注意しなければいけないことは、その感染力だ。ウイルス数個もあれば十分感染してしまうので、食品からだけではなくウイルスを排泄している患者(症状がなくても)から感染してしまうこともある。運が悪ければ一家全員感染ということもある。患者の嘔吐物や下痢便には大量のウイルスが含まれるので、その処理には細心の注意が求められる。また感染者は出来る限り食品を取り扱うべきではない。やむをえない場合は食品に触れる前に慎重に手洗いすることだ。もちろんトイレの後は石鹸で特に指先などを丹念に洗う必要がある。 体調が悪いときにはカキを食べないことは最低限の鉄則だ。日本産だからとか、新鮮だからとか言うことはリスク回避にはまったく意味がない。日本でノロウイルス患者が急増しているということは、それだけ海洋に流れるウイルスが多いことを意味する。下水処理では除くことができないからだ。日本各地のカキ養殖場では無菌処理に時間をかけて、食中毒対策に追われていると思われるが、低温で活動が鈍っているので排菌効率も悪い。 生カキはしばらく食べないほうがいいかもしれない。飲食店ではメニューに載せないほうが良いだろう。今年に限ったことではないが、日本では、生カキを出さないよう保健所から管内の飲食店へ指導しているところもあるくらいだ。零細な飲食店にはリスクが大きすぎる食品だ。 インフルエンザのピークシーズンとノロウイルスのそれは一致するので、おそらくこれからまだまだ患者が増えるはずだ。今後も感染に十分注意してほしい。

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中国HIV感染者統計

このほど中国衛生部は、今年10月末までに中国本土でのHIV感染者数の累計を18万3000人、またエイズを発症した患者数を4万667人、このうち死者は1万2464人であることを、最新の統計で公表した。ちなみに今年感染が確認された患者数を3万9600人としている。感染者数は昨年同期に比べ27.5%の増加となり、中国でHIV感染者数が急増しているは間違いなさそうだ。 中国衛生部は感染原因として麻薬中毒者の注射器の共用と性行為(売春)をあげているが、性交時にコンドームを使用するのは39%にしか過ぎないとしている。 これらの数字は中国政府が公表したもので、事実を過小評価している可能性が考えられ、実際にはもっと患者数が多くいてもおかしくはない。特に統計上の母数に含められない人数も少なくないはずで、中国政府が故意に隠すのではなく、統計上はじめからカウントが不可能な部分もあるのではないかと思われる。 いずれにしても中国のHIV事情は深刻だ。以前、シンセン市政府が患者数の増加に危機感をあらわにし、感染者数とともに域内の理髪店が重要な感染源であるとして指摘した経緯があるが、中国の政府機関がマイナスイメージとなるHIV患者の急増に関してその数字や感染経路を公表したことに、当時大変驚いたものだ。 HIV感染者の増加に関して余程の危機感を持ったものと思われる。 日本人駐在員はそのリスクに敏感になるべきだ。プライベートな事なのであまり強く忠告はしないが、無防備な人が非常に多いと聞く。せめて最低限の防御はするべきであり、いくら一人あたりの感染率は低いといっても、無防備な性交渉は自殺行為であると心得てほしい。もちろん他の性感染症のリスクもHIV感染に対して比べものにならないくらい大きい。中国に駐在員を置く企業としては、そのあたりをもう少し真剣に考えておくことも、重要な危機管理のひとつといえるだろう。 マイナスイメージにつながる情報は出来る限り公表したくない中国政府がHIVの感染者増について公にしたという意味を今一度考えてみるべきだ。

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タミフルに新たな注意表示

インフルエンザの特効薬としてあまりにも有名になったタミフルは近い将来現れるであろう新型インフルエンザに備えて各国がその備蓄を進めている。 ウイルスに効果がある医薬品は極めて限られているが、インフルエンザウイルスに大きな効果を発揮するタミフルは、新型インフルエンザにもその効果が期待されているだけに市場では奪い合いの状態が続いている。 製造ライセンスはスイスの製薬会社ロシュしか持っておらず、その生産能力に限界があることからライセンスを他でも使えるようにする動きもある。ところが原料となる八角(中華料理で使う香料)の供給にも限りがあるため、完全に化学合成できるようにならなければ急な増産にはつながらないだろう。 タミフルは国家備蓄のみではなく企業でも備蓄する動きがあるほか、インターネットで購入するなどして個人でも手元においておこうとする人もいるようだ。もちろんタミフルはインフルエンザに効果的な薬であるには違いないが、その使用に関しては十分な注意が必要で、個人の判断で服用するような医薬品ではないと思われる。 米国FDAでは、昨年11月、日本の幼児12人が副作用で死亡した可能性があることを公表しているが、ほかにも幻覚や異常行動などが認められるということから注意を促している。これらの事例はそのほとんどが日本で起きていることから特殊性を指摘する向きもあるが、FDAでは放置できることではないとして、タミフルの注意書きにこれら副作用情報を記載するよう今月に入ってメーカーに指示した。 タミフルに対してインフルエンザウイルスが耐性を持つことが知られている。新型インフルエンザ治療の切り札としてその効果を持続させなければいけないはずなのに、従来型のインフルエンザに使いたいだけ使っているのが現状だ。このままでは本当に使わなければいけなくなったときに、その効果が低下しているのではないかとの懸念も生じる。 病院で処方されたタミフルをすべて服用せずに次回のためにとっておく人もいる。タミフルを服用すると確かに症状はすぐに緩和されるので、もう治ったものと勝手に判断するようであるが、実はタミフルはウイルスを殺すものではなく増殖したウイルスが細胞の外に出てくるのを阻止する薬だ。症状がなくなっても数日間はウイルスが体内に残るので、症状が良くなっても服用を中止しないことが大切。もちろんこの期間は周囲への感染の危険性も大きい。 抗生物質の使用量は世界的にみても日本と香港は突出しているそうだ。必要なときに、薬の種類をきちんと選んで、必要な量を処方し、さらに患者は正しく服用することが求められるが、いい加減に使ってきたツケが薬剤耐性菌の出現といった結果で医療現場に混乱を招いている。 これから本格的なインフルエンザシーズンに入る。タミフルを持って安心するのではなく、日頃から感染対策を心がけるとともにもし感染したときは十分身体を休めることが治癒のために大切なポイントとなるということを理解したい。無理して出社していては病期が長引くばかりではなく、周囲への感染を広めるだけだ。会社ではインフルエンザの社員を働かせるのではなく、たとえ本人が出社を望んでも休むよう業務命令してもいいくらいだ。忙しい中、休めるはずがないという意見も多いことは承知している。しかし感染力が強いインフルエンザは瞬く間にオフィス内に広がり、結局生産性を落とす可能性が非常に高いと考えるべきだろう。やがて来る新型インフルエンザに備える意味でも、社内的なインフルエンザ対策を考えておく必要がある。

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世界糖尿病予防デー

血糖値を下げるホルモン、インスリンは1921年にフレデリック・バンティングらによって発見されたが、彼の誕生日にちなんで1991年にWHOによって11月14日を「糖尿病デー」と定められた。毎年この日を中心に世界中で糖尿病に関してのイベントが開催される。 現在、糖尿病患者は世界中で2億3000万人おり、これは全成人の約6%に相当するものだ。また糖尿病の関連した病気を原因として亡くなる人は300万人を超え、約10秒に一人が命を落とす計算になるという。 糖尿病には生まれつきインシュリンの分泌が悪い1型と、肥満が直接的な原因となって発症するため、生活習慣病として問題となる2型がある。先進国、途上国の関係なく患者が増え続けているのは2型糖尿病だ。 糖尿病はある日突然発症するわけではなく、本人が知らないうちに徐々に身体を蝕み、気がついたときには合併症を起こして取り返しがつかない事態に陥る怖い病気だ。毎年健康診断を受けることも大切であるが、血糖値が高いことを指摘された場合にその事実を軽視することなく、生活習慣を改善するなどして迅速かつ適切に対処することが何よりも求められる。 健康診断で糖尿病の疑いや、そこまではいかなくても糖尿病予備軍にあたる血糖値110mg/dlを上回る人が認められることは珍しことではない。さらに110mg/dlまではいかなくても血糖値が上昇してきていると思われる人まで加えると何らかの対策をとらなければいけない人達は相当数に上る。特に体重増加を伴う場合、家族に糖尿病患者がいる場合など、将来的な糖尿病のリスクが非常に高いものと判断して、直ちにダイエットを始めたいものだ。体重さえ落とすことができれば多くの場合そのリスクを免れる。血糖値がそれほど上昇していない段階で生活習慣を改善するなどができれば対処は比較的楽にできるが、血糖値が上昇するほどその改善には苦痛が伴う。 ただし糖尿病を発症していて体重が落ちる場合があるので要注意だ。何もしないのに体重だけが落ちるときは糖尿病はもちろん他にも病気が考えられるので、このような場合は必ず医師の診察を受けることを勧めたい。 糖尿病の怖い合併症として失明、四肢切断、腎不全が挙げられるがどれも生活の質を極端に落とすものばかりだ。血液中のグルコース(血糖)が高い状態は血管をボロボロにしてしまうなど影響が大きく、関連して引き起こされる病気で多くの命が奪われる。 健康診断などで糖尿病を疑われた場合は直ちに精密検査を受けて欲しい。血糖値に問題がなくても過去の平均的な血糖値を反映するヘモグロビンA1cが高かった場合などは必ず精密検査を受ける必要がある。 間もなく忘年会シーズンだ。毎日のように過食が続く人もいると思うがとにかく体重が増えないようにコントロールすることが大切。毎日体重計に乗ることも自分の減量に対する意識を呼び戻すことができるのでダイエットに非常に有効だ。怖くて体重計に乗れない?どんなに太っていても現状を受け止めなければ先には進まない。太っていれば太っているほど簡単に体重を落とせるとも聞く。体重が落ちればそれだけ励みにもなるものだ。 減食するとともに運動することで糖代謝を盛んにすることが可能だ。運動といってもジムに通ったりジョッギングしたりしてもおそらく長続きすることはない。(中には頑張っている人もいるが・・・)とにかく歩くこと!日常生活の中でどれだけ歩くかが勝負だ。仕事で外回りが多い場合など最高の環境にあるといっても良い。デスクワークが多いのであれば通勤を利用するのが手だ。主婦であれば買物では荷物がない行きくらいは歩いても決して損にはならない。糖尿病に限らず健康維持増進のために日常生活で常に身体を動かすことを意識したいものだ。

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広東省における狂犬病発生

中国広東省衛生庁の発表によると、今年1月から9月までに省内で狂犬病に感染して265名が死亡しているという。広東省の狂犬病に関しては在広州日本国総領事館のHPにて安全情報としてアップされている。http://www.guangzhou.cn.emb-japan.go.jp/seqinfo/doc/seq00105.htm 広東省に在住する日本人はもちろん、香港などから出張で常時広東省へ出入りする日本人にとっても不安を感じる向きも少なくないだろう。中国では広東省に限らず狂犬病の発生が多く、国や省レベルで対策に乗り出しているという。 中国に限らず狂犬病の発生は世界中で認められている。発生を見ない国は日本をはじめ台湾、オーストラリア、英国に限られるため、海外生活では注意しなければいけない病気のひとつといえよう。 狂犬病は犬だけがウイルスを持つとは限らず、身近なところでは猫も危険動物とされる。そのほか例外的なことをいえばコウモリも危険で、洞窟でその唾液が目に入って感染したという事例も報告されている。 海外ではむやみに動物に近づかないこと。特に犬は最も人との接触の機会が多い動物で、それだけに咬傷被害を受ける可能性が高い。狂犬病に感染した犬は凶暴になり、何にでも噛み付くようになるだけに危険だ。素性がわからない特に野良犬や野良猫には決して近づいてはならない。 狂犬病は感染して発症してしまうと100%死に至る。発症して治癒した例はギネスブックに掲載されているというから驚きだ。 体内に入ったウイルスは神経系をたどりながら脳にいたる。比較的移動の速度は遅いので噛まれた場所が脳から遠いほど発症までに時間が稼げるわけだ。もし犬などに噛まれたら、直ちに傷口を洗浄することが大切。狂犬病ウイルスは弱いのでこれだけでもかなりのウイルスを除去できる。そして予防接種だ。狂犬病は発症までに予防接種を受ければ、発症を防ぐことができる。予防接種を事前に受けている人であれば2回、そうでなければ6回の接種が必要となる。 予防接種は特別なものではないので、中国でも接種できる医療機関は多い。流行地に赴任する際には予防接種を受けておくほうが無難であると思われるが神経質になる必要もないだろう。万一、犬に噛まれたときのことを考えどこの医療機関で予防接種できるのかを調べておくことは無駄にはならない。週末診療に関しても調べておくべきだろう。 動物から感染する病気は狂犬病だけではない。インコなどの鳥類、みどり亀など屋内で飼われることが多い身近な動物も人獣共通感染症を持っていることがある。どんな動物であっても噛まれないように注意するべきで、いくらかわいいからといって口移しで餌を与えるようなことは絶対に避けるべきだ。

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生カキに注意!

生カキが原因と見られる食中毒がこのところ立て続けに発生している。日時や飲食店はまったく別であるものの、同じ業者「環球海産(ワールドワイドシーフード)」が納入しているカキによる中毒事例であることが判明した。現在、食品安全センターはこの業者に対して出荷の中止を要請しているという。 カキによる食中毒の多くは「小型球形ウイルス(ノーウォークウイルス)」によるものだ。 カキは海水中のウイルスを体内に溜め込み、体内にウイルスを濃縮してしまう性質がある。これを「生物濃縮」と呼ぶが、ウイルスがカキの体内で増殖することはない。したがってカキが水揚げされてからその体内でウイルスが増えることはありえず、流通業者や飲食店の温度管理等が不適切であったり、日数がたって鮮度が落ちたことが食中毒の原因になるわけではない。この点は一般の細菌性食中毒と大きく異なるところだ。 小型球形ウイルスによる食中毒は、もっとも頻繁に起きる食中毒にあげられ、特に冬の食中毒として一般的だ。毎年夏にはその件数が減るのが特徴であるが、今年の香港は夏場を通して発生がおさまった気配が認められず、ある専門家は、ウイルスの性質の変化を指摘している。 「新鮮だから」とか「高級ホテルだから」といったことが、生カキの安全性の保障になることは、残念ながらまったくない。その意味では飲食店にとっては、食中毒を発生させてしまうリスクが常にあるものと覚悟して生カキを供食するべきであり、できれば生カキは出さないほうが無難であるといえよう。日本のある保健所では、管内の飲食店に対して生カキをメニューに載せないように指導している。もちろんこれは強制ではないが万が一食中毒を出してしまったら、他の食中毒同様即刻営業停止処分となる。中小の飲食店であれば収入減と患者への補償などで経営難から一気に閉店に追い込まれることも十分ありえる。 生カキは食べてはいけない食品なのか?少なくとも体調が悪いときに食べるものではないことだけは確かだ。免疫力にさえ問題がなければ、体内に取り込んでしまったウイルス量にもよるが、何事もなく経過する可能性が高い。今回同じ業者が出荷したカキで食中毒事例が起きているが、おそらくこのカキを食べて何もなかった大多数の人も感染している可能性が高いとみても良い。ただ発症しなかっただけだ。 このウイルスは患者の便から排泄されるが、下水処理場で死滅することがなく河川や海洋に流れ込む。これを貝類が体内で濃縮する。その貝類を食べた人が感染して、ウイルスを排泄する・・・。このようなサイクルを考えると、人口が多い地域で収穫されたカキは危険であることが理解できる。日本のカキだから安全というものではない。日本の生カキのパックには「生食用」「加熱用」の表示がある。これは鮮度の良し悪しや加工方法で区別しているわけではなく、これはカキを養殖している海域による区分だ。 ある専門家の意見であるが、食中毒の危険性がまったくないカキは日本中どこにもないという。しかし、最近では生産業者が出荷前に無菌槽に数日浸けるといった無菌化処理をするなど、その安全性を高める努力をしているため実際に食中毒のリスクはかなり減少していると思われる。 カキが美味しくなる季節であるが、そのリスクを十分理解したうえで食べたいものだ。

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薬剤耐性黄色ブドウ球菌

今年、薬剤耐性黄色ブドウ球菌の感染者が9名発生し、そのうち37歳の女性が脳膜炎を併発して死亡したことから、衛生署では市民に注意を呼びかけている。 薬剤耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は従来より病院内の感染が問題になっていたが、今回の注意は一般市民レベルでの感染の危険性が高まっていることに対する警告だ。 MRSAは病院や老人施設などではすでに定着した病原菌であると認識されているものの、一般の人への感染は極めて稀であると思われてきた。しかし香港では昨年7件、今年はすでに9件の患者発生を確認しており、誰にとっても感染について十分な注意が必要になってきているとみられる。 黄色ブドウ球菌は健康人でも皮膚や口腔に常在するありふれた細菌であり、免疫力が落ちた場合など以外では通常問題になることはない。しかし昨今抗生物質の使用が極端に増えたことから、抗生物質に抵抗力を示す細菌が増えており、その代表的なものがMRSAと呼ばれる。 同じ黄色ブドウ球菌でも、MRSAはメチシリンという抗生物質に抵抗を示すものであるのに対し、他にもバンコマイシンに抵抗を示すVRSAというものもあり、新たな抗生物質が開発されてもやがては病原菌が抵抗力をつけるといういたちごっこが今後も続くと思われる。日本や香港は世界的に見て抗生物質の使用量が非常に多いことがこれまでも指摘されている。MRSAやVRSAがあらわれるのは、抗生物質の使いすぎが原因であることに間違いない。 たとえば「風邪」と診断されて抗生物質を出されたことがある人は少なくないと思うが、風邪症状を起こすウイルスには抗生物質は無効だ。2次感染の予防という目的で処方されているのが現状と思われる。不要な投与にあたるが、患者もその処方を求めていることもあり、必ずしも医師だけに責任があるわけでもないだろう。この点に関しては解熱剤も同じだ。 さて、一般におけるMRSAの予防であるが、保菌者の傷口などに接するのが最も危険であるといわれるので通常では神経質になる必要はない。しかしサウナやマッサージ、エステなどを行う店では、タオルなどの処理が適切でなければ十分感染源になることが考えられる。衛生管理が不十分だと思われるこれらの店は利用しないことが懸命だ。

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インフルエンザ予防接種

今年もインフルエンザ予防接種が病院やクリニックなどで実施されている。例年だと8月下旬頃から実施できるようになるが、今年はワクチンの内容が大きく変更されたため供給が少し遅れたそうだ。 今年のワクチンはA型 ニューカレドニア株、 ウィスコンシン株B型 マレイシア株 これらはあくまでも前期までの流行を考慮した上でWHOが決定したもので、必ずしもこのタイプが流行するとは限らない。従ってワクチン接種を受けていたからといって感染を確実に防げるというものではなく、肝炎ワクチンのようにほぼ100%の効果を期待できるものではない。感染の機会を減らせるという程度に考えておきたい。 インフルエンザ予防に必要なものは、手洗いなどの衛生管理、栄養、そして休養だ。つまり手洗いなどでウイルスの侵入機会を減らし、バランスが取れた食事(栄養)と十分な休養(睡眠)で免疫力を保つことが肝心だ。 現行のワクチンでは、これからの流行が非常に心配されている新型インフルエンザ(鳥インフルエンザ)には無力であることはもちろん、現存のウイルスでさえも確実に予防できるとは限らないが、自分自身の衛生管理と免疫力維持ができれば、すべてのインフルエンザに対して感染の機会を減らせることは間違いない。 予防接種を受けておいた上で、自分自身での感染予防が実施できるのであれば、その効果は最大限大きなものになると期待できる。もちろん自身の健康管理(衛生、休養、栄養)はインフルエンザ予防のみにとどまることなく、多くの感染症の予防にもつながることでもある。 接種は少なくとも本格的な流行が始まるまでには終えておきたい。流行には地域差があり、日本では11月からであるのに対して香港での流行は年明けからで、日本の流行時期とはズレる。 冬の低温と乾燥がインフルエンザ流行の原因とされるが、香港では日本ほど気温が下がらないうえに湿度が最も高い季節に流行が重なる。寒さと乾燥だけがウイルスを活発化させるというわけでもなさそうだ。クリスマスから新年にかけては旅行を計画する人も多い。人々が活発に動く季節は感染症にとっては一気に流行を拡大させるチャンスでもある。予防接種は遅くとも12月はじめまでには済ましておきたい。 このところ毎年のようにインフルエンザワクチンが不足している。昨年は最終的には希望者全員が接種できたようであるが、待たされた人も少なくなかった。接種を希望する場合は、なるべく早期に接種することを勧めたい。今の時期はどこの医療機関でもワクチンを準備していると思うが、接種を希望する場合は念のため在庫を確認しておくと良いだろう。接種料金は医療機関によってまちまちだ。昨年は中国から違法に輸入して安く接種していたところもあるので、極端に安いところは避けた方が無難だろう。

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蜂蜜から抗生物質

香港で広く販売されている輸入蜂蜜から複数の抗生物質が認められ、健康被害が心配される一部商品は強制的に回収命令が出されている。 この報道を見て、やっぱり何でも日本製に限ると思ったら大違いだ。実は日本でも蜂蜜製造業者は抗生物質を使用することが多く今回日本製の蜂蜜からたまたま検出されなかった(検査されていなかった可能性もある)だけで、日本製だからといって安心はできないのだ。 とんでもない話もある。日本では、輸入蜂蜜からは抗生物質は認められてはならないとされている。国内のある蜂蜜生産業者は、多量に使用している抗生物質が基準値を超えないように中国産の蜂蜜で希釈していたという。日本に輸入されている蜂蜜には抗生物質が含まれていないということを悪用したものだ。 そもそもなぜ養蜂に抗生物質が必要なのか。大昔から続く養蜂に抗生物質など無用であると考えてもおかしくはない。 ミツバチには腐蛆(ふそ)という病気があり、これを防ぐために抗生物質が使われるのだそうだ。たしかに密集して生活するミツバチに一度病気が発生しようものなら瞬く間に感染が拡大し、短時間のうちに全滅する危険性がある。養蜂家にとっては死活問題だ。小規模であれば問題は少ないのかもしれないが、大量に供給しなければいけない大規模養蜂業者にとっては必要悪なのかもしれない。 このあたりは養殖魚への抗生物質使用、野菜への農薬使用、食品の保存性を高めるための合成保存料の使用など、我々の食生活を支えるべくその生産性を高めるために行われていることとある意味共通項もあるといえよう。 食の安全は他人任せでは絶対に守ることはできない。しかし、もちろんすべての有害物質を避けることも不可能だ。我々が生活するうえで、何が本当に危険で、何が必要悪であるかあるいは生活の質を落とすなど自己犠牲を伴ってでも避ける必要があるものは何か、といったことを常に考えておかなくてはならないと思う。 余談であるが、1歳未満の乳幼児には蜂蜜を与えてはいけない。これは蜂蜜に含まれることがあるボツリヌス菌に対する影響を避けるためだ。日本産であろうと中国産であろうと危険であることに違いはない。