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強い紫外線に注意

北半球では5月から8月にかけて、紫外線が最も強い季節となる。爽やかさを感じる5月でさえ、紫外線は驚くほど強い。 香港政府は市民の紫外線対策として、昨年から紫外線指数(UV Index)が11以上になったときには、1時間ごとに警告を出すことにしている。このようなシステムは香港と同緯度の国や地域としては例がない。 よく耳にするこの紫外線指数(UV Index)は、世界的な皮膚がん患者や白内障患者の増加を背景に、WHO(世界保健機関)、WMO(世界気象機関)、ドイツ連邦放射線防御事務局などが、1997年に共同で開発したものだ。 紫外線指数(UV Index)0-2 Low屋外にいても安全 3-5 Moderate 6-7 High日中はなるべく日陰にいること肌を露出しない衣類の着用、日焼け止めの使用帽子、サングラスを着用すること日傘も有効。 8-10 Very High  11以上 Extreme外出を控えること外出時は常に日陰に身を寄せ、でき得る限りの紫外線対策をほどこすこと。 帽子はつばが広いもの。衣類は織目が細かなものが良い。サングラスは黒いほど良いという訳ではなく横からの紫外線がカットできるように、顔のかたちにできる限り合ったものの方が良いとされる。 地上の生物は、太陽からの紫外線がオゾン層によって吸収されているので、その生命が守られている。オゾンは地上2万~4万mという極めて気圧の低い上空に存在しているが、仮にこのオゾンを地上に持ってきたらわずか3mmの厚さにしかならないという。その程度の量にしかならないオゾンの役割は、想像をはるかに超えるものだ。 近年、このオゾン層の破壊がすすんでいる。オゾン層が極端に薄くなってしまうオゾンホールの存在が明らかとなりその原因となるフロンガスの使用規制が厳しくはなっているものの今もその破壊は止まっておらず、紫外線対策はますます重要なものとなってきた。 ところで紫外線には3種類あり、波長によってA、B、Cの3つに分類される。このうち地上で最も有害となるのはB(UV-B)だ。一番波長が短くエネルギーが強いUV-Cはオゾン層に完全に吸収されるため、現在のところ幸い人体が直接影響を受けることはない。なお波長が一番長いUV-Aは皮膚を黒くするものの毒性は低い。 紫外線の人体に対する影響は、第一に皮膚障害。日焼けをおこすというレベルの問題ではなく、皮膚がんの最大の原因となる。世界的に皮膚がんの原因の80%は紫外線によるものだと考えられている。また白内障の大きな原因となるなど、眼に対する障害も問題だ。白内障は眼の水晶体が徐々に混濁して視力を失うもの。 これからの季節は天気予報で天気を確認するのと同じくらいに紫外線情報にも敏感ななるべきで、紫外線対策を常にこことがけるようにしたい。 帽子はつばが広いもの。衣類は織目が細かなものがお勧めだ。サングラスは黒いほど良いという訳ではなく横からの紫外線がカットできるように、顔のかたちにできる限り合わせたものの方が良いとされる。なによりも紫外線が強いときにはできる限り外出を避けることが最も有効な対策となる。

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新型インフル日本国内で患者確認

カナダから帰国した高校生二人、引率の教員一人が新型インフルエンザに感染していることが確認された旨、今朝、厚生労働省から発表された。 日本での感染確認は時間の問題であったので、感染者が確認されたとしても、まったく驚くことではない。日本国内で感染者が確認されたことが、それほど大騒ぎするようニュースであるのかはなはだ疑問だ。ワイドショーならともかく、ニュース番組では通常枠で十分ではないかと思う。 日本ではワイドショーなどが盛んに新型インフルエンザを取り上げてきたが、ゴールデンウィーク中の海外旅行に大きな変化は認められなかったようだ。もちろんその時点で日本での発生がなかったからでもあるが、今般の報道を見ていると、恐怖心をあおって無意味な過剰反応を一般の人に起こさせないかと不安を感じる。 豚由来のインフルエンザでこれまでにわかっていることは、弱毒性であること、従来のインフルエンザで犠牲になりやすい高齢者に重症例がないこと、タミフルやリレンザといった現在ある抗インフルエンザ薬に十分な治療効果が期待できることといったことだ。 弱毒性の意味であるが、感染した場合に呼吸器までの症状にとどまるということであって、全身症状に移行して重篤な症状に陥ることがほとんどないという意味だ。今回の新型インフルエンザでは、糖尿病やHIVなど基礎疾患を持っている人が多く犠牲になっている。また多数の死者を出しているメキシコでは、貧困から病院へ行くことをためらって、重症化するまで放置してしまったケースが多いという。中には健康な若者が死亡した事例も報告されているようだが、貧困との関係など詳しくし調べる必要があるだろう。 今回のH1N1型新型インフルエンザの毒性は、毎年流行を繰り返すA香港型インフルエンザ(H3N2)と同程度といわれる。H3N2型ウイルスの犠牲者は日本国内だけでも毎年数百人、世界的には途上国を中心に数十万人がこのインフルエンザによって命を奪われている。今回の新型インフルエンザを異常に恐れている人も少なくないようだが、季節性インフルエンザには無頓着であることと矛盾している。 メキシコで生まれたと思われる新型インフルエンザはこれまでのところ感染が確認された人は3000人を超えた。そのうち死亡は50人弱だ。感染しても症状が出ない不顕性感染もあるだろうし、ごく軽い症状で治療も受けることなく(診断されることもなく)治っている人もいることだろう。実際のところ何人が感染しているかは、大規模な抗体検査でもしないかぎりつかめる数字ではない。 すでに世界的には相当な数の感染者がいるのかもしれないし、その可能性も小さなものではないだろう。現に米国では急激に感染確認者が増えており、その数はメキシコの患者数を上回っている。今後は世界的に感染者が増え、現在の季節型インフルエンザと同じく、いつ感染してもおかしくはない通常のインフルエンザになるかもしれない。 また今後の変異に関しても未知数であり、毒性を強める危険性も否定できず、十分な監視を続けることが重要だ。 大きな懸念はやはりH5N1鳥インフルエンザだ。現在散発的に発生しているが、こちらの感染が拡大してくるととても厄介だ。豚由来新型インフルエンザに振り回されることなく、決して警戒を怠ってはならない。

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新型インフルエンザ続報

メキシコで発生したと思われる豚由来の新型インフルエンザは、その後世界各国に拡大し、患者の数はWHOの発表では19カ国地域で800人を超えるという。 その一方で、死亡者はメキシコ国内に限られ、唯一メキシコ以外で死者が出たという米国のケースでもメキシコで感染したメキシコ人がたまたま米国滞在中に死亡したもので、今のところメキシコ以外での感染で死亡した例はなく、そればかりかメキシコ以外では患者の症状が軽いなど、専門家も首をかしげるような現象が起きている。 各国で相次いで認められている患者も、メキシコからの旅行者またはメキシコに滞在していたことがある人ばかりで、各国で2次感染した例は今のところ限定されている。香港で認められた第一号患者もメキシコ人だ。 香港の患者は、4月30日に香港に入ってきた翌日には患者と認定されており、その迅速な検査体制とホテル自体を即座に封鎖するなど徹底した対応を即断している。私が見る限りSARSを経験して培われた香港の防疫体制が、今回の新型インフルエンザに生かされて機能しているものと思われる。 本日のニュースによれば、米国での状況が好転していることが報じられるなど、わずかではあるものの豚由来新型インフルエンザに関しては収束に向けた明るい見通しが出てきたのか。 今後の展開には予断は許さないものの、今の段階では、あわてることなく冷静に状況を判断することが求められる。弱毒株であり2次感染がまだまだ少ないことを考えると感染力もそれほど大きなものではないようだ。人類にとって免疫力がないので、感染したらそれでも重症化の危険性がある。予防法などの扱いとしては従来の季節性インフルエンザと同じで良いようだ。引き続き、感染予防には十分注意していきたい。 ワクチンの開発には4~6か月かかるというが、これは予想よりかなり早いといえる。世界中で認められる新型のウイルスタイプが99%以上一致していることが新型ワクチン開発を容易にしているようだが、北半球ではこれから季節性インフルエンザワクチンの製造が始まるため、優先度をどのように決定するのかが重要な判断となる。季節性インフルエンザも途上国を中心に毎年数十万人が犠牲となっており(日本では数百人)、決して軽い病気ではないからだ。うまくいけば季節性インフルエンザワクチンの製造が終了したころに新型ウイルス対応ワクチンが製造できるかもしれない。ただしインフルエンザワクチンの製造には鶏の有精卵が欠かせない。季節性インフルエンザワクチンの製造分しか有精卵の供給が考えられていない。有精卵の確保が問題になるかもしれない。 現在の豚由来新型インフルエンザはあまり恐れることはない。問題は鳥インフルエンザだ。豚由来ウイルスに騒いでいる間に確実に変異していることは間違いなく、これが人類に襲い掛かってくると、豚インフルエンザどころでは到底すまない可能性が大きい。すでに東南アジアでは、豚から鳥インフルエンザウイルスが認められていること、今回の新型インフルエンザウイルスが、人から豚に感染している事実が認められたことなどから、今後、より人に感染しやすい、あるいはヒト-ヒト感染を起こしやすいウイルスに急速に変異する可能性がある。 豚由来新型インフルエンザに関する報道は特に日本で加熱しているが、現状をH5N1新型インフルエンザの出現に備える予行演習的に考えてもよいだろう。現在、各国の空港などではウイルスの侵入を防ぐため、防疫体制を強化しているが、これは単に患者が自国に入ってきてウイルスを拡散させないための手段というだけではない。各国が協調してウイルスの拡散を防ぐことが大切で、当然自国から患者が他の国へ出ることも予防しなければいけない。世界の患者数をできる限り増やさないことが、次の新型インフルエンザの発生を遅らせる大きな対策にもなることを理解しておきたい。 現在のところ、出国時の検査体制は不完全であるように思う。WHOのガイドラインに沿っているとはいえ、この点もしっかりやっておかないと、ウイルスの輸出につながるばかりか、機内という最も危険が大きい空間での集団感染を起こしてしまいかねない。現状では、感染したくないのであれば飛行機には乗らないことだ。 不謹慎な言い方かもしれないが、現在の新型インフルエンザは感染しても先進国であれば大したことはない。しかし、一人でも患者が増えることが次の新型インフルエンザが生まれるリスクを確実に増やすことは間違いない。不安をあおるような報道にじたばたするのではなく、またマスコミも絵になるような部分だけを切り取った報道などせず、何が問題なのかきっちりと理解できるような工夫をして欲しいものだ。 南半球ではこれから本格的なインフルエンザシーズンを迎えるが今回の新型インフルエンザが今後も増え続けると、季節性のインフルエンザと区別がつかなくなる可能性が高くなり、対策がとりにくくなることが考えられる。 手洗い、うがい、栄養、休養。いつも頭に置いておきたいインフルエンザ予防だ。もちろんその他の感染症の予防にもなる。

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2009年H1N1型インフルエンザ流行

新型インフルエンザの警戒レベルが、一昨日発表されたフェーズ4が今朝、48時間にして再度引き上げられ、フェーズ5となった。メキシコ以外では死者が出ることはなく症状も軽いということから、もう少し様子を見るかと思っていたが、この点は私の予想が外れた。一定の判断基準に合致することでフェーズが引き上げられたわけだが、WHOが今回の事態に対して強力に対応するというサインにもみえる。 米国で死者が出たことで事態がさらに深刻になったように一見思えるが、この患者はメキシコで感染して訪米治療を受けていた幼児で、基本的にメキシコのみでしか死者は出ていないとするべきだ。報道も、単に「米国で死者が発生した」とするのではなく、「米国滞在中のメキシコ人幼児死亡」とするべきだ。このような報道の仕方が、社会に対して不安を煽ることになることは、SARSでも学習していたのではないだろうか。 ところで今回のウイルス。これまで「豚インフルエンザ」と呼ばれていたが、今後は「2009年H1N1インフルエンザ」と呼ばれることになる。養豚業に与える影響なども考慮されたのかもしれないが、歴史上、スペイン風邪、イタリア風邪、アジア風邪、香港風邪といったように最初の発生国や地域の名称が通称として使われてきていることから、今回のインフルエンザもいずれ「メキシコ風邪」として一般的には呼ばれることになる可能性が高いだろう。ウイルス名の通称も現在のA香港型ウイルスという呼称にならうのであれば、Aメキシコ型ウイルスとなることが自然だ。 個人的にはフェーズ5になったことよりも、このウイルスの毒性に注目したい。メキシコ以外での死者が出ていないこと(アメリカの幼児は例外)、各国の患者の症状が軽いことから、毒性が弱いこと、あるいは感染を繰り返すうちに毒性に変化が生じている、といったことを私なりに考えていたが、日本の専門家、国立感染症研究所ウイルス第3部長・田代眞人氏は、今回のH1N1インフルエンザは弱毒性であると明言している。弱毒性であることは極めて重要な事実だ。 今後さらに感染が拡大する可能性は高いだろうし、現在感染が確認されている国や地域以外でも感染者がいることは間違いないだろう。もちろん体力の弱い人は、弱毒性ウイルスであったとしても死亡することもある。今後、メキシコ以外での感染者から死亡者が出ることがあってもなんら不思議はない。 メキシコでの初発は3月だと思われている。ある地方の養豚場近くで発熱などを訴える患者が増えていたというから、4月に入る頃にはメキシコ中に感染拡大していたことは容易に想像がつく。当然のことながら多くの感染者が国境を越えていたはずだ。また事情を知らない多くの観光客などがメキシコを訪れている。一方でメキシコ政府は事実関係の詳細を調査せず(あるいは隠蔽し)、WHOは何の情報も報告することはなかった。事実関係が明らかになり、豚由来のウイルスが疑われるまではメキシコ以外の国々では、弱毒性ウイルスで症状が軽い故、通常の季節性インフルエンザだとして、新型インフルエンザ患者の治療をしていた可能性が非常に高い。 今回のウイルスは、恐れられていた鳥インフルエンザからの強毒性新型インフルエンザとはまったく違う性質のウイルスであることから、今の時点でしっかりと対策をとることが、早期終息させるために重要で、今後も発生が懸念される鳥インフルエンザ対策につなげることが大切だ。 現在、一般個人レベルの対策は、従来のインフルエンザ予防と変わらず、手洗い、うがい、休養、栄養といったところだ。加えて軽い運動を行うことで免疫力の維持につとめたい。この際、禁煙も大切。外出する時間をできる限り少なくするために外食も控えたほうが良いだろう。出張などの移動を制限するのであれば接待禁止は当然だと思う。 私が入っている日本のメーリングリスト(ほとんどが医師)でも当然ながらインフルエンザが話題となっている。過剰反応する医師をたしなめる専門家もおり、ここは比較的バランスがとれている。マスコミは絶対に不安を煽ってはいけない。ワイドショー的な情報に一般の人が振り回されてはならない。SARSを経験した日本人も今では香港に少なくなったが、当時、マスコミ報道に本社が振り回されて、過剰な対策を駐在員に求められたため多くの香港駐在日本人がたいへん困惑していたものだ。正しい情報を収集し、冷静に判断して行動することが、今後さらに強く求められるだろう。

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インフルエンザ警戒レベル フェーズ4へ

メキシコから発生した豚インフルエンザ(Swine Flu)は世界に感染を拡大し、現在のところ感染者が確認された国は5カ国になり、そのほか疑いがある患者を認める国も増え続けている。 初発国メキシコでは、現在までに1995名の入院患者がおり(退院患者も含まれる)、すでに149名が死亡。毎日公表される数字は急増している。 世界的に豚インフルエンザが感染を拡大していることが明らかとなり、WHOでは、今朝、ケイジ フクダ事務局長補によって、フェーズを3から4に引き上げる決定が公表された。これは今回の豚インフルエンザが新型インフルエンザであることをWHOが認めたことになる。WHOでは各国に対策を求め、さらにワクチン開発を促している。その一方で、感染は既に世界に拡大していることから国境の封鎖や渡航の制限までは求めてはいない。ただし感染拡大を防ぐ意味から、具合の悪い人の移動は控えるよう呼びかけている。 日本政府はフェーズ4の行動計画に従って  1、総理大臣を対策のトップに置くこと 2、感染国からの航空機、船舶の入港を制限すること 3、一般には不用不急の渡航を制限すること 4、今後の動向を注視すること といった内容を発表した。 日本政府は、直ちに日本への感染拡大があるとは思えないとしながらも、空港などの係官を増員し、特に関係国からの入国者(特に発熱患者)の監視を強化するとしている。 これまで鳥インフルエンザ(H5N1)への警戒から策定されていた対策が今後生かされることになるが、ワクチンはH5N1ウイルス向けにこれまで研究開発されてきているので、今回のH1N1インフルエンザでは開発は振り出しに戻ってしまう。米国では既に開発に取り掛かっているが、いくつもの課題があり完成にはかなり時間がかかりそうだ。日本もワクチン開発に欠かせない問題のウイルスの入手を急いでいる。 ワクチンに関しては季節性インフルエンザの製造をストップして、新型ワクチンの製造を優先する方針を厚生労働大臣が打ち出しているが、新型インフルエンザの毒性が弱い可能性もあるので、その場合に季節性インフルエンザワクチンの製造をストップしてまで新しいワクチンを製造する必要があるのかという疑問を呈する専門家もいる。 毎日公表される患者や死亡者の数はとても気になるものでSARSを思い起こすが、この数字をみて毒性や感染力は判断できない。現在世界的に流行しているA香港型インフルエンザでは、日本国内だけでも毎年数百人が死亡している。多い年は1000人を越える死者を出すほど毒性が強いウイルスだ。 メキシコ政府が、すでに3月から通常とは違うインフルエンザを疑う患者が増えていたことを知りながら公表してこなかった疑念もあるようだ。これが事実であるならば、現在分かっている以上にウイルスは拡散しており、これまでは通常の季節性インフルエンザと同じ扱いを受けていた可能性も大いに考えられる。個人的な希望的観測ではあるが、今回の新型インフルエンザはメキシコ以外では死亡者が出ていないことから、感染拡大は今後も続くものの、従来の季節性インフルエンザレベルに落ち着くのかもしれない。 今日から各国で警戒強化されるが、感染即発症ではないので空港などでの発熱患者を監視するだけでは、患者の国内侵入を防ぐことは難しい。感染国からの帰国者が、帰国後に発熱したからといって必ずしも申告するとも限らない。 今後は個人の感染予防がいっそう大切になる。手洗い励行やうがいは基本である。ただし喉のウイルスは付着後20分程度で細胞内に侵入する。細胞に入り込んだウイルスはうがいでは除けないので、あとは本人の免疫を頼ることになる。感染者が監視を潜り抜けて入国してくることが十分考えられることから、人ごみには入らないこと、見知らぬ他人との距離を保つことも必要だ。マスクは、サージカルマスクでは自分の感染予防には十分ではない。一時N95タイプの高気密マスクが求められたがこのマスクをきちんと装着すると、息苦しくとても実用的ではない。SARSのときにN95マスクをしていた人を多数見たがほとんどきちんと装着できていなかったと思われる。つまり、着けているだけでまったく意味がなかったことになる。現在のところ感染予防に効果的なマスクは、不織布製の抗ウイルスマスクだが、品薄になることは間違いなさそうだ。 マスクをしていれば大丈夫というわけでは決してない。ワクチンにも優るといっても過言ではないのが人の免疫力。今回のウイルスに対して抗体を持っている人はほとんどいないと思われるが、異物を排除するシステムは、確実ではないかもしれないが新型インフルエンザにも間違いなく働く。 免疫力を維持するために、バランスがとれた食事(適切な栄養摂取)、休養(十分な睡眠)そして適度な運動が欠かせない。今後の情報に注意することはもちろん、自身の健康管理に努めて欲しい。

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豚インフルエンザ

先週末に衝撃が走った豚インフルエンザ(スワイン インフルエンザ)のニュース。これまで新型インフルエンザは鳥インフルエンザから変化するものと一般には認識されていたところに、豚由来のウイルスに多くの人が感染し、これまでに86人以上が死亡している事実はきわめて重く受け止めなければいけない。 今回、メキシコや米国南部を中心に千数百人の患者を出していると見られるウイルスはH1N1型インフルエンザで、現在も毎年流行しているAソ連型ウイルスと基本的には同じものだ。しかしサブタイプとして、今回メキシコで確認されたものは、これまでに人での感染事例がないものとして今後の流行が懸念されている。 最近では「鳥」インフルエンザばかりが話題となっているが、豚も新型インフルエンザの発生に深く関与している。A型インフルエンザには、ウイルス表面のたんぱく質(H、N)の性状からH16種類、N9種類の144タイプが存在するが、豚が感染するのはおもにH1N1型インフルエンザ。もちろんこのウイルスは鳥にも、そして人にも感染するので、鳥-豚-ヒトの間を行き来することが可能であり、新型インフルエンザが生まれる可能性があるわけだ。ヒトのインフルエンザウイルスと鳥インフルエンザ(H5N1)が交雑して生まれてくる新しいウイルスが警戒されているのはそのためだ。 日本はもちろんのこと各国で今回の豚インフルエンザに対して、おもに水際での対策が強化されている。特にメキシコから帰国する人に対するチェックは厳しくなされるほか、行政機関では相談窓口を設けるなど対策に追われている。米国では非常事態宣言をだして警戒しているが、その一方で市民に冷静に対応することを求めている。 今回の豚インフルエンザに対してどの程度の警戒をするべきであるかは判断が難しい。H1N1インフルエンザは従来のA型インフルエンザと類似しており、検査も容易である上タミフルやリレンザなどの抗インフルエンザ薬の効果も期待できることから、冷静に対応するべきだという意見も一理あるだろう。個人的には、今後1週間くらいの患者動向をみたうえで、今後の対策を考える必要があるのではないかと思う。 WHOが先週末に招集した緊急委員会では、情報が十分ではないとして、世界的な大流行(パンデミック)に備える警戒レベルを即座にフェーズ3からフェーズ4へ格上げすることは見送ったものの、国際的緊急事態であることを各国の共通認識として認めている。WHOでは明日28日に再度委員会を招集するが、感染が拡大していることからフェーズを引き上げる可能性も少なくないだろう。 すでに米国ニューヨークなどでも患者が確認され、しかもヒトからヒトに感染した疑いが強いことがわかっていることから、すでに多くの国・地域にウイルスが拡散している可能性も考えられる。現在のところ、ニュージーランド、フランス、イスラエル、スペインから感染を疑う患者が認められている。ウイルスはメキシコで感染した人が持ち帰ったものと思われることから、一般市民レベルでも特にメキシコからの帰国者との接触には注意が必要だろう。 しかし、米国での患者はメキシコにおける患者よりも症状が一般に軽く回復していることから、豚インフルエンザ感染とはわからないまま、季節性の通常のインフルエンザとされているケースも少なくないかもしれないとの専門家意見もある。 メキシコでは豚から直接感染したケースが死亡例などでは目立っていた。これも個人的な考えだが、豚からヒトに直接感染したウイルスの毒性と、ヒトからヒトに再感染した場合のウイルスの毒性には違いがあるのではないかと思う。今後、メキシコ以外でヒトーヒト感染が認められるようになると事態はいっそう深刻なものになるだろう。 ウイルスは宿主(ヒトや豚など)を殺してしまうと、自身も生きながらえることができない。現在のA香港型ウイルスは比較的強い毒性を備えており、日本だけでも毎年数百人がその犠牲になっているが、このウイルスは自身にとってちょうど都合が良い毒性と感染力に落ち着いたものであるといえる。 さて、豚インフルエンザが今後どのように拡散するのか、あるいは感染収束するのか、現在のところまったく予想はつかない。マスコミ報道ばかりではどうしても不安が煽られてしまう。WHOや各国政府の見解に注意するとともに、自分自身で情報にアクセスすることがとても大切だ。SARSの時に経験したが、当時香港ではマスク姿を除けば普通の生活が営まれていたことが、日本での報道からはまったく伝わっていなかったことに苛立ったものだ。香港の新聞には、「この世の終わり」かと思えるような活字が躍っていたくらいなので仕方がないのかもしれないが、香港市民は実際に自分たちの生活を見ているわけであり、比較的冷静だったように記憶している。今のメキシコはどうだろう。 豚インフルエンザといえども通常のインフルエンザと予防法は変わらない。手洗いの励行は言うまでもないが、適切な栄養摂取、十分な休養をとること、そして定期的な運動を欠かさないなど、免疫力を落とさない生活習慣を心がける必要がある。仮にフェーズが引き上げられたとしても、一般市民レベルでは現在の対応と大きく変わることはない。 なお、現在のWHO(世界保健機関)の事務局長は、元香港衛生署長であり、鳥インフルエンザで世界で初めて死者が出た事例や、SARSも扱っており、その経験を世界の衛生機関の頂点であるWHOで生かしてくれるものと期待したい。

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メタボリックの基準に見直しの議論

昨年4月よりメタボリック症候群対策に重点をおいた特定健診制度が国主導で始まった。これは医療費を削減する目的で導入されたものであるが、当初からその効果は期待できないとする意見も相当あったうえ現場の混乱も大きく、その見直し議論が始まっている。 厚生労働省研究班が日本全国の40歳から69歳(メタボリック健診の対象年齢)の男女約3万人を対象に実施した大規模調査で、肥満でなくても血圧や血液検査値に異常があれば、死亡の危険性が高くなることが明らかになった。 調査によると、確かにメタボリック症候群の場合、心筋梗塞などの虚血性心疾患は、男性で3倍、女性で2倍、死亡する確率が高かったが、たとえ肥満ではなくても血圧や血糖値に問題があればメタボリックとされる人と同様に死亡率が高いことも判明した。なお、日本人の死因で最も多いがんの発症にもメタボとの関係は認められなかった。 研究班の主任研究者である津金昌一郎、国立がんセンター部長は、「肥満重点の対策で期待できる効果は小さく、禁煙や血圧管理など効果が期待できる対策を推進するべきだ」としている。 個人的な意見ではあるが、メタボリック健診は、後期高齢者向け医療費への保険組合や市町村などからの拠出金を多く出させるための手段として、巧妙に考えられたものだと思っている。 メタボリックと診断した者に対して特定保健指導を実施することを義務とし、その効果はもちろんのことメタボリック健診の受診者数が目標に達しなかった場合などは、ペナルティーとして拠出金額を本来より多く徴収することとなっている。反対に目標を達成した場合は拠出金を減額するという、まさに飴と鞭の政策となっている。ところがその効果を達成することも、単純に目標人数を受診させることも極めて困難であることは、メタボ健診導入以前から多くの専門家が指摘していたことだ。しかも医療費を削減するとしながらも、メタボ健診にかかる事業経費も膨大なものとなるため、健康保険組合を解散させてしまったところも少なくはない。またペナルティーを払った方が安くなると考えて、何も行なわないと決めた健康保険組合もあると聞く。 弊社の健康診断でも日本のメタボリックの基準を採用しているが、これはその結果を日本の健保組合などにおいて利用されているケースが多いためだ。弊社ではメタボリックの判定を行なうものの、その結果にこだわることなく循環器系疾患のリスクがある場合はその対象者に解説させていただいている。 「健康診断は決して機械の検査をしているのではない」というのは、私の持論だ。例え同じ数値であっても判断が異なることは少なくはなく、まして便宜的に決められた数値で切ってしまって判定することなど、個々人への診断を放棄してしまったようなものだとも思う。もちろん基準値をもとに診断することは、ある程度まで必要なことであるとはもちろん認めるが、もっと幅を持った解釈をしなければいけないことも確かで、医療者はその点を十分理解しておかなければいけない。 そのあたりを正しく理解したうえで健康診断をおこなうべきであって、数字で区切ることしかできないものが人様の検査結果を論評するなど、行なってはならないことだと断言してしまっては言い過ぎだろうか。 導入から1年が過ぎたメタボリック健診も検査値のみを基準に、機械部品の不良品をはじくがごとく厳密に判定していたのではその意味合いはなく、ましてやその根拠が不確かなものであるのであれば、百害あって一利ないものになってしまう。 健康管理はまさに自己責任であって、メタボリック健診を導入した厚生労働省(国)が面倒を見てくれるものではない。一時は流行語のようになったメタボリック。決して言葉に振り回されることなく、自分自身の健康に常に目を向けておきたいものだ。そのためにもいつでも相談できる「コンサルタント」ともいえる人や機関を持つことが大切だろう。

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デング熱

このところ香港で立て続けにデング熱患者の発生が報告されている。昨年の発生はは42例。今年はこれまでに11例の報告なので、昨年並みの患者発生といえ、特に重症者が出ているわけでもない。すべて輸入例で香港内の感染は考えられず、主に東南アジアを旅行した際に感染しているようだ。 デング熱は熱帯亜熱帯地域ではもっとも頻繁に見られる感染症で、場合によっては風邪程度に思われることもある。それほど患者が多いわけだが、中にはデング出血熱を発症して死亡することもあるので、決して侮る分けにはいかない病気だ。 推計によると世界中で年間1億人がデング熱を発症し、25万人がデング出血熱に至るという。デング出血熱は粘膜からの出血傾向を特徴とし、全身症状からショックを起こすことがあり、国によっては患者の数%が死亡しているという。 デング熱はネッタイシマ蚊が媒介する。マラリア媒介蚊とは種類が違うが、熱帯亜熱帯地域ではごく普通に見られる蚊であり、極力刺されないようにすることしか感染予防手段はない。ワクチンは未開発だ。 熱帯亜熱帯地域に滞在する場合は、皮膚の露出を少なくし虫除けを使用するなど、蚊に刺されないようにする工夫が必要になる。これはマラリア感染の予防にもつながる。田舎に滞在する場合は特段の注意が必要であるが、最近は都市部でも流行しており、首都など都会に滞在するからといって安心はできない デング熱は昨今の地球温暖化の影響なのか、従来感染の危険性がなかった高緯度地域(温帯地方)でも感染事例が報告されるようになってきた。これはマラリアについても同じで、今後感染危険地域の拡大が懸念されており、日本でも沖縄ではいつ患者が発生しても不思議ではないとする研究者もいる。

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手足口病流行シーズン入り

ちょうど一年ほど前から中国で持続的に手足口病が流行している。最近は香港でも患者が増えていることで、香港の衛生署では市民に感染予防の注意を呼びかけている。特にこれから真夏にかけての暑い季節は手足口病が流行しやすいので、小さな子どもを持つ親は十分に注意してほしい。 手足口病は、その名の通り手、足、口を中心に水疱や発赤など特有の症状があらわれるウイルス性疾患で、特に乳幼児の感染率が高く、患者の半数は2歳以下が占める。 エンテロウイルスが原因だが、これにはいくつもの種類があり最近特に問題になっているのは、比較的中枢神経系の障害を起こしやすい(といっても滅多におきないが)EV71型ウイルスだ。 感染発症しても有効な治療薬はなく、対症療法的な処置がとられるが、多くは数日のうちに回復する一般に予後が良い感染症だ。それでも大きな問題になるのは、感染力が強く、流行が拡大しやすいこと、そして稀ではあるものの、髄膜炎や脳炎などを起こすことがあり、死亡事例も報告されているからだ。実際に中国では今年3月までに4万人あまりの患者が報告され、そのうち18人が死亡したという。 予防接種はなく、これといった確実な予防法はないが、手洗いを頻繁におこなうなど日頃の衛生管理は感染予防の重要なポイントとなる。また便とともに大量のウイルスが排泄されるので、患者や回復後日が浅い場合は排便後の手洗いを特に丁寧におこないたい。 手足口病は、日本では5類感染症定点把握疾患に指定されており全国約3000箇所の小児科医より毎週報告されているが、学校保健法では、学校で予防するべき感染症とは指定していない。これは急性期だけ登校登園を停止しても、感染予防効果に乏しいことや、稀に見られる重症例を除けば大部分は軽症疾患であることが理由だ。また回復後もウイルスの排泄がしばらく続くことも学校など集団生活の場で感染阻止することが難しい理由に挙げられる。 流行しやすい季節がはこれからしばらく続く。小さな子供を持つ人は、家庭内の衛生管理に注意が必要だ。手洗いは手足口病に限らず、多くの感染症予防の基本でもある。

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肺結核

女性お笑いコンビ「ハリセンボン」の箕輪はるかが結核に感染・発症していることがわかり、現在入院治療を受けていることが公表された。 コンビの相方はもちろん、マネージャー、劇場関係者、そして観客までをも含めて二次感染の可能性が考えられる。現在、東京都などでは、本人の症状が出始めたという昨年12月以降に接触があった人をリストアップするとともに、これまでの観客にも呼びかけて二次感染の有無を早急に確認したいとして、相談窓口まで設けている。 箕輪はるかにとっては好んで感染したわけでもない結核なのに、マスコミで大々的に取り上げられてしまい大変気の毒ではあるが、影響が大きいと思われる結核感染事例だけに、この事態は致し方ないことだろう。 結核は過去の病気だと思っている人も多いが、現在でもその危険性は払拭されたわけではなく、多くの患者が発生している。もちろん途上国に特に多いのは確かだが日本での新規患者発生数は10万人当たり20人強。先進国の中では患者数が多い。また香港での昨年の患者発生は5730人となっており、10万人あたりにすると約80人にもなる。中国では統計上ではあるが、100人以上発生している。 日本は、結核に関して先進国の中でもっとも深刻な問題を抱えている。年間3万人程度の患者発生と、その1割弱の死亡が報告されており、先進国の中では際立っている。昔と違って結核の治療は進歩しているので、きちんと治療を受ければ決して怖い病気ではないが、治療を怠るとかなり面倒な病気になってしまう。アフリカなどで大きな問題となっているが、結核とHIVとの重複感染が起きると死亡率がきわめて高くなる。 毎年多くの人が受診している健康診断での胸部レントゲン検査は、特に海外では結核検診としての役割も担っている。定期的な検査を受けることが大切ではあるが、風邪かなって思っていても、2週間も咳が止まらないなど、いつもと違う異変を感じたらすぐに医師に相談してほしい。 日本では、検査を拒否して多くの子供に感染させていた教師も過去にいて大問題になったことがある。社内でも感染を広げてしまうことは同様に大きな問題となる。定期検診を受けることはもちろんのこと、異常を感じた場合の積極的な受診は、東南アジアなど結核が多い地域で生活をしていたら当然ともいえることだ。