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健康に生きるために(3) 『自然とともに、自然を忘れないよう』

前2回のお話しは、野生動物とヒトは生物学的に大きな違いがないにもかかわらず、その摂食や運動においてまったく違う生き方をしている。このことが生物学的にヒトが異質であるという内容でした。今日はそのまとめとします。 ところで私の山歩きのスタイルは、急がないこと。無理しないで歩くことです。そして周囲のものを見て、聴いて、触れて、場合によっては食べるなど五感を駆使することです。撮影する写真は毎回200~300枚くらいです。このなかで、ゆっくり歩くことは、動物が餌を探す行動そのもの。毎日単純な行動を繰り返しているのが野生動物の世界です。私自身は、先週末に歩きながら食べたものは野イチゴ、そしてパンダナス(タコの木)の実でした。どちらも甘味はかすかなものです。野イチゴは酸っぱさが際立って、甘味はほんのわずか。パンダナスは石のように硬い外皮には歯が立ちませんが一番中心側だけにちょっとだけ甘味を感じる果肉があるのです。どちらもこの季節にしかありません。ヒトも大昔に食べていたようです。香港歴史博物館の石器時代を再現したコーナーにもパンダナスの実が置かれていました。ちなみにパンダナスは家屋の資材としても使われます。暑い中を歩いて、のどが渇き、お腹がすいたりしていると、こんなものでもとても美味しく感じるものです。 さて、なぜこのようなことを書いたかというと、現代の人々は甘味の強いもの、塩味がしっかり付いたものなどを好み過ぎていると思い、それが多くの病気の原因になっていると思うからです。もちろん食べものを得るために歩くことも必要とぜず、さらには食べ過ぎているわけですから健康に良いわけがありません。現代人は自然の味覚をほとんど忘れてしまっているのではないでしょうか。 歩いていて思ったこと…坂道で息が荒くなり呼吸が苦しくなってきた時にいつも思うことですがこの一呼吸一呼吸は二酸化炭素を吐き出していること。つまり体内の炭素を吸気で得られた酸素と反応させてエネルギーを得て、その残りかすを一生懸命に吐きだしていることに他ならないということ。ひと呼吸で排出される炭素量に匹敵するだけの極々小さな数字でしかありませんが、確実に体重減少につながっているといえるのです。そう思うと苦しくても頑張れます。(本当は頑張るほどの運動は良くないのですけど…) 動物は基本的に走りません。もちろんお互いに競争もしません。走るときは獲物を得るときと危険回避するときだけ。つまり無駄なエネルギーは使わないのです。ヒトも同じではないでしょうか。必要最小限のエネルギー摂取にとどめて、できる限り歩くこと。単純ではありますが、もっとも大切なことです。 健康ブームで何を食べればよいとか、何をすればよいとか、とにかく様々な健康「エセ」情報が氾濫していますが、決してそれらに惑わされてはいけません。私の情報もその一つかもしれませんので、どのように受けとめられても構いませんが、私が書いていることはヒトが生きるための基本であると私は信じています。これは医療の世界に身をおいて約30年間に得られた確信です。 もちろん現代の食生活などを今さら否定しても意味がありません。基本になることをしっかりとらえて理解したうえで、さてどのような生活スタイルをとるべきかを考えていただきたのです。「長生きなんかしたくない」と言い切る方もありますが、それも確かに生き方ではありますしかし、健康に生きることをしっかり意識しておかないと、「太く短く」生きたいと思っていたにもかかわらず、たとえば脳梗塞で倒れて介護が必要となって、それこそ本人の意思とはまったく反対に「細く長く」生かされてしまう不幸にも陥る可能性が高くなります。介護を受けるのも、介護を施す側になることもとても大変なことです。このことは健康である若い時からしっかり考えておくべきであり、健康診断などで循環器系疾患の可能性を指摘された人の場合にはなおさら危機感を持って意識するべきです。 ピンピンコロリが一番です。日本の国民医療費が毎年急増していますが、誰もが食べ過ぎを避け、できれば粗食を心がけ、車に頼ることなく一生懸命に歩くようになれば、まさに医者いらずでしょう。医療費は確実に減少します。どうせお金をかけるのであれば、本当の意味で健康指導できる医師などへの報酬を大幅に上げるべきです。ちょっと余談ですが、高齢の私の父が、1年間病院に行かなかったからといって自治体から毎年感謝状が贈られている。病院に行かないことがそれだけ珍しいことなのでしょうが、ちょっとおかしくはないでしょうか。 野生動物は長生きしてない? そんな声が聞こえてきますが、彼らは弱肉強食の世界。病気の治療を受けることもできない厳しい世界に身をおいていますから、その種としての天寿を全うできないことがほとんどです。人に飼われている動物は違います。本当の意味で健康的に育てれば一般に知られているよりずっと長生きできます。天敵から確実に保護された上に、良質な餌が与えられるわけであり、もちろん病気になれば治療を受けさせてもらえるわけですから当然でしょう。ただ過保護な、あるいは動物のことを理解しないでペットを飼っている人も少なくはなく、このような場合には反対に短命になってしまう例もあり得ます。 人でも動物でも生きていく「環境」はとても大切です。ヒトはその環境を自分自身で整えることが可能であり、どのようにするのかは、正に自己責任といえましょう。

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熱中症に注意!

連日の雨。今年は何でこんなに雨ばかりなんだろうと最近はついついぼやいてしまいますが、香港では今の時期が雨期の真中にあたります。5~8月の4ヶ月間の降水量は年間の6割を超えてしまいます。 さて、昨日の香港は雨が続いた後、珍しく綺麗に晴れて気温も急上昇しました。近海を通過した台風の影響もあったかと思いますが、高温に対する注意報も出たほどです。 長らく悪天候が続いた後の好天、しかも気温湿度とも高い状態は熱中症の危険性が極めて高くなります。昨日は週末ではなかったので良かったのですが、もし週末だったら、熱中症患者がかなり発生していた可能性が高い条件がそろっていました。最近、週末も雨になってしまうことが多かったので、週末に天気が良くなれば、一斉に海山に出かけることになります。まだ6月ということで少々甘い判断もあってか、熱中症に対して無防備になってしまうようです。天気予報では今週末から少し好転するようですが、返還記念日を含む3連休は熱中症の危険性が最も高くなるように思います。もちろんこの時だけではありませんが、香港ではこれから9月くらいまでは熱中症には十分な注意が必要です。 熱中症予防、対応 (思いつくままに列記します)   1、気温・湿度が高い時に無理な運動しないこと  2、熱中症と思われる症状が現れた人がいたら、他の人も運動等を中止すること。(室内でも同じです)  3、十分な水分の補給。  4、大量の発汗は血液中のミネラルを失います。塩分の補給が大切です。(痙攣予防)  5、運動負荷を低くすること。小まめに休憩すること。  6、睡眠不足や前日の大量飲酒を避けること。  7、扇子は身体を冷やすのに意外に便利。常に携帯を。  8、発汗が悪く、皮膚表面が乾いているときは全身に水をかけて扇子やタオルであおぐこと。  9、呼びかけにまともに応答できない、言動がおかしいなどは重症であるサイン。躊躇せずに救急車(ヘリ)を要請すること。 10、運動前にも水分補給。途中は小まめな給水を心がける。    のどが渇く前でOK.。のどがとても渇いた状態での我慢は禁物。 11、0.1~0.2%の塩分を含む水が給水には適切。 12、帽子等の着用。衣類はゆったりして風通しの良いものにする。 13、調子が悪いと感じたら日陰に移動。衣類を緩めてできる限り風にあたる。扇子であおぐ。 14、子供と高齢者には特に注意すること。 15、日頃の栄養摂取にも注意。 16、エアコンばかり使わないで、日頃から汗をかくようにすること。 香港在住の日本人にも熱中症での死亡例があります。十分注意してください。繰り返しますが、決して無理しないこと、早めの対処が大切です。

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健康であるために(2) 『動物の摂食行動を考える』

前回の医療情報では哺乳動物とヒトでは遺伝子レベルではほとんど差がなく、特に生存にかかわる基本的な性質は共通してせていることを、脂肪を例に説明しました。嫌われ者の脂肪にも役割があること、動物に比べて摂取カロリーが多い人は、貯めすぎた脂肪から分泌される悪玉のアディポサイトカインが生活習慣病の原因になることを説明しました。 今回は動物の摂食行動について考えてみましょう。人と同じ哺乳動物を取り上げても、草食、雑食、肉食動物、それぞれにその行動は異なります。「ヒト」はもちろん雑食動物に分類されますが、その食生活は野性動物ではありえない特殊なものです。 さて、豚や熊、サルなどの雑食動物がどのように餌を得ているのか想像してみてください。常に餌を求めて歩き回っています。豚はいつも食べているように見えますが、地面を嗅ぎまわって餌を探しているだけで、常に移動しながら餌さがしをしています。ヒトに一番近いサルは、一部の種類は肉も食べるようなので、食餌の内容がヒトに最も近いと思われますが、やはり日中は餌を探しまわっている訳です。 野性の世界では、例えヒトに最も近い種であるサルでさえ、一日中動きまわってやっと生きながらえることができる餌を確保しています。そこには我々が耳にする規則正しく、またバランスを考えた食生活など存在しません。とにかく動きまわって餌を確保しているだけ。にもかかわらず満腹になるような量の餌には、めったにありつけないことでしょう。このことを我々も少し考えなければいけません。 動物の場合、餌を探し回ること自体が運動になっています。人が運動・運動というのは、食べている量に対してエネルギー消費が少なすぎるからです。その点では一日中歩き回っているような営業マンには運動不足の心配はないとおもわれますが、とにかく摂取カロリーが多すぎるのが人です。 「動かざる者、食うべからず」 これは当然として、その食べる量も腹8分で十分。最近では運動量も少ないので、腹6分でも大丈夫だといわれるようになってきました。これではすぐにお腹が空いてしまう、と思う人が多いのでしょうが、それこそ動物の世界を見習わなければいけません。 粗食を心がけることが大切ではありますが、現在の食生活で、いきなり粗食にしなさいといっても無理。私の個人的な考え方ではありますが、何を食べても構いません。肉でもケーキでも、塩辛いものでも、何を食べようが気にする必要はないとおもいます。ただし、少食にすること。これだけです。食べ過ぎ注意。夜、外食でカロリーが多くなりそうだったら昼から調整しましょう。完全絶食は弊害があるようですがお腹が空いてどうしようもない時は、チョコレートをかじって血糖値をあげてやるのも手です。 ヒトがいかに野生動物の食行動に近くなれるか、そこがポイントになると思います。自分も「動物」であることを常に意識しましょう。

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健康であるために(1) 『ヒトである前に動物であることを意識しよう』

ヒトのDNAとチンパンジーのそれとは、およそ3%しか違いがないそうです。いくらチンパンジーがヒトに近いといっても、たったこれだけしか違わないことには驚いてしまいます。しかし、チンパンジーに限らず他の多くの哺乳動物と比較しても、ヒトを含めてそれぞれの遺伝情報にはそれほど大きな違いがないことは確かです。つまりヒトには他の哺乳動物に備わっている基本的な性質をすべて持ち合わせているといっても過言ではないのです。 その性質で重要なものは、生存にかかわるもの。野生動物は常に餌にありつけるわけではなく、時には何日も食べることができないこともあるでしょう。それでも歩きまわって餌を探さなければいけません。もちろん餓死する危険に常にさらされている訳ですが、たとえ餌がなくても少しでも長く生きながらえることができるようなシステムが動物の体内には備わっています。脂肪の蓄積です。 脂肪は特に皮下や腹腔内に蓄えられますが、この脂肪にはエネルギー貯蔵としてだけではなく、それなりの役割があることもわかってきました。生体活性物質のアディポサイトカインという物質は主に内臓脂肪から分泌され、血管の炎症を予防したりがんの発生を抑えているとの報告もあります。適度な量の内臓脂肪からはこのような「善玉」アディポサイトカインが分泌されますが、内臓脂肪が多くなりすぎると性質が異なる「悪玉」アディポサイトカインが分泌され、高血圧や脂質異常症、糖尿病といった循環器系疾患のリスクを高める事になります。 野生動物には必要量の脂肪が蓄えられているわけですがヒト、特に先進国の人々場合、摂取カロリーが多すぎることから脂肪が必要以上に蓄えられ、その脂肪が原因となって様々な病気を引き起こしているのです。 内臓脂肪は消費されやすい脂肪で、エネルギーが不足した時に即座に消費されることになるので、野生の世界では過剰に蓄積されることなどまずありえません。野生動物での肥満症など聞いたことがありませんよね。(ペットでは肥満が問題になります) 皮下脂肪は体温を保持したり、衝撃から身体を保護するなどの役割を果たしますが、エネルギーにはなりにくいものです。その働きゆえ簡単に消費されてしまっては困るからです。女性の肥満は皮下脂肪が多くなるタイプですが、皮下脂肪からはアディポサイトカインは分泌されておらず、皮下脂肪型肥満では、肥満に関連した病気にはなりにくいことも確かです。 脂肪の話になりましたが、食事(食餌)をどのように考えるかが大切なことになります。次回はヒトと野生動物の食生活について考えてみましょう。

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紫外線に注意

5月は年間を通して最も紫外線が強いといわれます。もちろん8月くらいまでは紫外線に対して特段の注意が必要な季節ですが、5月はまだそれほどでもないという油断が一番怖い月でもあります。 WHOでは世界各地の紫外線の強さを公表していますが何と香港は中緯度地方の中ではとりわけ紫外線が強く危険であるとしています。数年前に公表されたものですがその指示に従って香港政府では紫外線対策についての広報活動を強化しています。 紫外線は太陽光成分のひとつで、プリズムを通した光や虹では紫色の外側にくる光で、人の眼には見えません。しかし通常地上に降り注ぐ太陽光の中では最もエネルギーが強いものであり、皮膚の細胞を損傷し壊死に至らしめます。日焼けで肌が赤くなったり、皮がめくれたりするのは肌が強い障害を受けた結果です。その後の反応として色が黒くなるのは、肌を黒くして紫外線の影響を少なくしようとする生体防衛反応です。 黒人は紫外線に対して非常に強い防衛能力を持っていますがこれは、先祖代々紫外線が強い地域で暮らしてきたために肌が弱い白っぽい人が淘汰されていったためであるともいえます。オーストラリアでは皮膚がんが多く、政府がその対策に躍起になっていますが、これはメラニン色素がほとんどない西洋人が、オーストラリアに入植したことが原因であり、皮膚がんが激増することは当然の結果です。もともとオーストラリアに居住していた先住民族アボリジニーは濃い茶色の肌をしています。そのような肌でなければ本来生きていけないのです。 さて、我々日本人の場合、白人でも黒人でもないその中間ですが、比較的紫外線には強いといわれている民族です。中国人も同様です。ところが色々な事情で近年紫外線量が増え、その対策が叫ばれるようになってきました。オーストラリアはその意味ではますます危険になってきたといえます。 日焼けが格好良いものとして、人工的に日焼けさせるサロンなどもありますが、とても危険な行為です。絶対にやるべきではありません。 これからの季節、特に海や山への行楽には、紫外線対策が欠かせません。日焼け止めは必須ですし、帽子やサングラスの着用も有効です。肌はできる限り露出しないこと。泳ぐ時は、水に強いタイプの日焼け止めを使用し、時々塗り直しすることも大切です。意外に知られていないのは眼の障害です。強い光を長時間眼に入れることで、白内障のリスクを高め、酷いと失明に至ります。 これからの季節は、熱中症対策が特に必要になりますが同時に紫外線対策も講じてくことがとても大切です。

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輸入デング熱

香港衛生署は20歳代の男女2名のデング熱感染事例を公表しています。この二人は4月4日から8日までインドネシアバリ島に一緒に旅行した際に蚊に刺されて感染したものと思われます。 香港では今年に入ってこれらを合わせてすでに18人のデング熱患者が確認されています。数字でみると昨年1年間の患者数が30名であったのに比べると早いペースで患者があらわれていますが、これまでのところ香港内での感染事例はなく、すべて旅行先で感染した輸入例のみです。 香港では日本に比べると旅行機会が多いのではないかと思いますが、それだけに渡航先での感染症には特に注意する意識を持たなければいけません。 デング熱は蚊が媒介する感染症で、死亡率は0.01から0.03%といわれ、熱帯地方では風邪と同等の扱いを受けることもあるようです。年間、世界で1億人以上が発症しているとも推計されていますが、感染しても発症しないことも少なくはなく実際にはその何倍もの感染者がいるのではないかと考えられています。 ウイルスを持った蚊に刺されて4~6日後、39度くらいの発熱で突然発症します。症状はインフルエンザに似ていますが眼の奥や筋肉の痛み、さらに発疹が伴うことが特徴です。発熱は急ですが一旦少し下がり、再び高熱がでるというパターンをとることが多く、約1週間ほどで後遺症もなく回復します。ただし再感染すると、デング出血熱を発症して死亡率が3~6%に跳ね上がるので、この点は十分な注意が必要です。 特に熱帯地方への旅行に際しては、とにかく蚊に刺されないことがとても大切です。デング熱の媒介をする蚊(ネッタイシマカ)は昼間にも盛んに吸血行動を行うので、夜だけ注意していれば良いと言うものでもありません。同じく蚊が媒介する熱帯病で最も注意が必要なマラリア。この病気を媒介するのは同じ蚊でも種類が違うハマダラカと呼ばれる蚊で、こちらは夕方から夜にかけての活動が盛んです。 デング熱やマラリアといった熱帯病の予防には、蚊に刺されないようにすることが基本中の基本です。肌の露出を少なくすること、虫除けスプレーの使用、場合によっては蚊帳の使用が推奨されます。 そして、もうひとつとっても大切なことは、旅行後に急な発熱などがあった場合には、必ず医師にその情報を伝えることです。香港などの非熱帯圏の医師は熱帯病に対して経験が少なくなかなか確定診断に至りません。熱帯熱マラリアが発症しているにも関わらず診断が遅れて死亡した日本人もいます。医師への情報(いつ、どこに渡航したのか)を的確に伝えることは、極めて重要なことであり、時には自分の命を守ることにもなることを覚えておいてください。

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前立腺がんについて

米国の投資会社バークシャー・ハザウェイのウォーレン・バフェット氏(81歳)が、株主向けに自らが前立腺がんに罹患していることを明らかにしました。氏は世界的に有名な投資家、経営者であり、ビル・ゲイツに並ぶほどの所得を得ている超有名人です。然るに病気の公表は大きなニュースにもなるわけです。 ところでこの前立腺がんは、現在世界的に激増している男性のがんで、今後すべてのがんで最も多いものになることも予想されており、十分な注意が必要です。これは前立腺がんが高齢者のがんだといわれるように、寿命が長くなるほどその発見率が高まることが患者増の背景にあります。また日本での増加は食生活の変化があげられます。純粋な日本食であれば良いのですが、脂肪分が多い洋食が多くなり、前立腺がんに限らず婦人科系のがんを含めて患者数をかさ上げしているようです。 がんというととても怖い病気ですが、前立腺がんは早期発見早期治療が可能ながんであり、決して怖いがんではありません。そのサインを見逃さないことが大切です。もちろん早期発見できなかった場合は、体中で暴れることになります。夜中に何度もトイレにおきる、おしっこの勢いがない、残尿感ですっきりしないといった症状を年のせいだからと放置してはいけません。確かに50歳くらいからは前立腺肥大がおきるためこのような症状に見舞われることは珍しくはありません。しかし肥大がおきる年齢と前立腺がんの発症年齢はそれほど違わないだけに症状には敏感でありたいものです。 おかしいなという症状に気が付いたら必ずPSAという腫瘍マーカーを検査してください。2002年末に前立腺がんが発見された天皇陛下は、PSAを検査してがんの早期診断ができたのです。ごく早期の発見だったので、翌年1月に手術を受けられて根治しました。 前立腺がんの進行はとてもゆっくりしているので、早期診断ができる期間が長いのです。それだけにサインは見逃せません。前立腺がんに限りませんが、「がんのサイン」を見逃さないようにすることは治療成績を大きく左右します。

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メタボリック症候群

メタボリック症候群を診断し、その患者向けに保健指導する、いわゆるメタボ健診制度が2008年4月より実施されています。このメタボリック症候群は心臓、脳血管などの循環器系疾患のリスクを極めて高くします。その危険因子を改善して国民の健康増進を図り、国の医療費の削減を狙うという「表向き」の理由を掲げて保健指導が行われています。「表向き」という表現がひっかかると思いますが、ここではその説明を省きます。 厚労省研究班ではその絶対条件である腹囲が基準(男性85cm以上、女性90cm以上)に達していなくても脂質異常(低HDLコレステロール、高中性脂肪)、高血圧、高血糖が二つ以上重複することで、やはり循環器系疾患に罹患するリスクが高くなることが判ったとして、きめ細かな保健指導を行うよう市町村や事業者に求めるという方針を決めました。 メタボリック健診の現在の基準は見直さないで、新たな保健指導はこれとは別の枠組みで行うといいます。2013年に「メタボリック健診制度の見直しに反映させると言いますが、現在の制度でも現場の負担は大きいのに、来年からはさらに複雑化することで、対応しなければいけない現場が混乱するのではないかと危惧されます。 そもそもメタボリック健診は誰の為に行われているものであるかを考えたほうが良さそうです。国民の健康増進の為に行われていると考えるのはお人好しです。本気でそのように考えるのであれば、もっと基準をシンプルにして、なおかつ判断に幅を持たせるようにしなければ何の意味もなくなってしまうと思います。制度をつくれば良いというものではありません。 2008年にスタートした制度の効果判定が5年後の2013年にはじめて行われます。この判定のためには厳格な診断基準を設けなくてなならず、これが必ずしも国民の健康には結びついていないと、私は思っています。何のための効果判定なのか?この点についても長くなるので説明を省きますが、今後の私のメールの中で折々触れることになります。 もちろんメタボリックという概念はとても重要なものでこのことは誰もがしっかりと頭に入れておくべきことです。そのうえで指導する側がどのように「患者」に伝えるのかこの点が難しいところです。 少食にして歩くこと。 私が常にお伝えすることはこれだけです。難しい概念など意味がありません。我々はヒトである前に哺乳「動物」であることを認識するべきです。毎日3食規則正しく餌を喰う動物がいますか?じっとしていても餌が運ばれてくる動物が、ペットや家畜以外にありますか? 自分で餌を探し回ることがないペットには、野生動物にはない病気がたくさんあります。 メタボリック症候群など最近になって理論づくられた面倒ななことなど細かく考えなくても、感覚的に、どのようにするべきかは判ってくるものと思います。 気候が良くなってきました。とにかく身体を動かしましょう。急に暑くなってくると思いますが、暑いからとか、空気が悪いからとか、そんなエクスキューズは要りません。そして、太っている人、太ってはいけない人は、今の摂取カロリーを極力落とすことを意識しましょう。すでに多くのお客様に私の考え方にご賛同いただき実行されています。健康診断の結果には驚くほどの結果が出ていますよ。今日から始めませんか。

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コレステロールについて(続)

善玉コレステロールと悪玉コレステロールについてです。 先のメールでは確かにこの点には触れていませんでしたが、何かと話題が多く一般的にはとても気になるところですね。実はコレステロールそのものには良いも悪いもないのです。 コレステロールは肝臓で代謝・合成され、血流に乗って全身に送られます。細胞をつくったり、ホルモンをつくったりする大切な「原料」となるコレステロールが肝臓から供給されているのですが、このコレステロールを悪玉コレステロール(LDLコレステロール)と呼んでいるのです。必要があって肝臓から送りだされているのに何か変ですよね。LDLコレステロールにとっては、きっと迷惑話しであるに違いありません。LDLコレステロールが多すぎると、動脈硬化の原因となりひいては循環器系疾患のリスクを高めるということで、このコレステロールをあえて悪玉と呼んでいるにすぎません。 一方で善玉コレステロールですが、これは末梢で余ってしまったコレステロールが、肝臓に帰る途中にあるものです。末梢から回収されてくるコレステロールが多ければ、動脈硬化のリスクが低くなるという理由から、善玉コレステロール(HDLコレステロール)と呼んでいるわけです。 では、LDLあるいはHDLとは何でしょうか。コレステロールは単独で血液に溶けることはできません。そのためリポ蛋白という担体に結びついて血液に溶ける事ができるようになるのです。油汚れは洗剤で落とすことができますが、これは洗剤の成分が油と結びついて水に溶けるようになるわけです。リポ蛋白も同じだと考えても理屈上はかまいません。LDL   Low Density Lipoprotein(高比重リポ蛋白)HDL   High Density Lipoprotein(低比重リポ蛋白)リポ蛋白の比重が重いか軽いかだけの違いです。 最近はコレステロールの治療を開始する基準を、日本ではLDLコレステロール量のみで決める傾向がありますが総コレステロールもHDLコレステロールも無視してLDLコレステロールが140㎎/dlを少しでも超えたら投薬してしまうという乱暴な医者も中にはいるようです。ちなみにLDLコレステロールは、総コレステロールからHDLコレステロールを引き、さらに中性脂肪の20%を引くという簡単な計算で求めることができます。最近は直接測定することも多くなってきましたが、このような計算で簡単に、しかもかなり正確にその量を知ることができます。(ただし中性脂肪が400㎎/dl未満のみ) 最近、コレステロールに関して、あまりにも脅され過ぎているようです。前回のメールと合わせて、コレステロールについて今一度考えていただければ幸いです。

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コレステロールについて

皆さん、コレステロールって悪いものだと思い込んでいませんか?これは大間違いですよ。血液中のコレステロールの80%くらいは自分の肝臓で合成しているものです。コレステロールが高いからといって、食事制限したところで、肝臓で足らない分は合成してしまいます。もちろん外から入ってくる食餌性コレステロールが多ければ自らの合成を抑えるわけです。このように肝臓でコレステロール量を調整するのは、生命にとってコレステロールの存在が欠かせないからです。 コレステロールは細胞膜の原料。家でいえば梁にあたるものといえましょうか。古くなった細胞は壊され、新しものに生まれ変わっていきますが、コレステロールがないと細胞の代謝も行えません。また性ホルモンや副腎皮質ホルモンといったステロイドホルモンもコレステロールがその構造中に含まれます。 日本動脈硬化学会という大きな学会が大規模な調査をしてコレステロールの新しい治療ターゲットレベルを提案したことがあります。従来の数値よりも約10%高い数値で良いというものでしたが医学界からは一蹴され相手にされませんでした。その後も動脈硬化学会とは別に「コレステロールは高目が良い」「必ずしも下げる必要はない」あるいは「下げたことでかえって循環器系疾患のリスクが高くなることもある」などという研究発表が続きましたが、結局いまだに高コレステロールの判断基準に関して見直されていません。 基準が変わることなると、今まで長年にわたって投薬を続けてきた患者に投薬中止の説明をしなければならず、現場が混乱するという反対意見も根強く出ています。なるほど。薬を出せなくなるのが嫌なんだ。患者イコールお得意様を失うことを嫌っているのだと、私は納得しました。いったい誰を見て、どこを向いて医療を行っているのでしょうね。高コレステロールの治療薬の市場は驚くほど巨大です。確かに影響は大きいですね。 弊社では、健康診断が終了した直後のお客様に、できれば当日中に電話で血液検査の結果を報告させていただいています。その際に、「総コレステロールが230ありますね」などと基準より少し高いことを伝えると、「え~~~っ」とか声をあげられる方、思わず笑ってしまう方、反応は様々ですが、誰もがコレステロールというものは少しでも高いといけないと思い込んでいるのです。もう洗脳されているとでもいうのでしょうか。医者からはちょっとでも高いと脅されるし、巷のマスコミはコレステロールが如何に悪いかを伝え、どうすれば下げられるかを指南するし、コレステロールを下げるという食品が宣伝され、サプリメントが氾濫しています。これではコレステロールは絶対下げなければいけないもの、低いものでなければいけないと思い込まされてしまいます。こうして知らず知らず洗脳されていく訳です。 卵は一日1個まで。こんなことを聞いたことがある人は少なくないと思います。誰がこんな無責任なことを言いだしたのでしょうか。イカやタコなども良くないとか。まるでコレステロールだけでこのような食品が出来上がっているのではないかと思わせる言い方です。ある食品を極めて限られた一面だけをもって評価することはまったく愚かなことですが、そんなことを「偉い」専門家が平気で話すわけですから困ったものです。 高血圧、高血糖、高中性脂肪などの循環器系のリスクがなければ総コレステロールは240㎎/dlまで問題ないとするのが動脈硬化学会の基本的な見解です。反対に180㎎/dlより低くてもリスクになるといいます。 コレステロールに対して神経質になる必要はまったくありません。極端に高い(300前後)のであれば別ですが、240や250でオロオロする必要はありません。そんな人はお金儲けが好きなヤブ医者が優しく微笑んで迎えてくれます。 私自身これまで何万人ものデータを見てきましたが、コレステロールに注意が必要な人は、遺伝的にどんどん高くなってしまう人くらいではないかと感じています。両親のコレステロールレベルが高い人は、毎年の健診データには注意したいものです。