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抗生物質が効かないサルモネラ菌

サルモネラ菌は食中毒を起こす原因菌の中では最も発生頻度が多いとも言われるもので、日本では年間4000~6000人の食中毒患者を出しているといわれる。実際には家庭内感染で医療機関で食中毒原因菌の特定を受けることなく治癒してしまう軽症例を含めると相当な数になるのではなかろうか。香港では具体的な数字はわからないが、やはり患者発生はかなりの数に上るのではなかろうか。 ところでこれまでサルモネラ菌に特効薬として使われてきたニューキノロン系の抗生物質に対して効果を示さないサルモネラ菌が急増してきた。免疫力が低い乳幼児などでは重症化する場合もあり、厚生労働省の研究班では監視を強めるとのことだ。 サルモネラ菌は動物の消化管内に広く感染しており、食べ物ばかりではなくペットからの感染も少なくないと思われる。これまでの患者も自宅にペットを飼っているケースがあり、飼主がサルモネラ菌中毒になるのとほとんど同じ時期にペットにも同様の症状がみとめられたことも報告されている。このケースでは患者から検出されたサルモネラ菌と、ペットから検出されたものとが遺伝子的に一致している。 これまで日本で認められた薬剤耐性サルモネラ菌は、その多くが乳幼児から見つかっており、中にはニューキノロン系の抗生物質のみならず7~10種類もの抗生物質に効果を示さないものもあたっという。人から検出された薬剤耐性サルモネラ菌は1999年には0.5%に過ぎなかったものが、2006年には4.5%にまで増えており、専門家の間ではこのまま耐性菌が増えると大変なことになると警戒している。 なぜこのような薬剤耐性サルモネラ菌が出現したのかが問題だが、これは家畜やペットなどに大量の抗生物質が使われていることと無関係ではない。畜産業者は飼育している動物に感染症など病気が発生することを嫌い、その予防として大量の薬剤を使用することがある。認可されている薬剤ではあるものの大量に、あるいは継続的に使われれば対象となる微生物(病原菌)が耐性をもつようになることは避けられない。販売用ペットにも安易に抗生物質が使用されている可能性が高い。 抗生物質をはじめ薬剤を大量に使うのは畜産に限らず魚介類の養殖でも認められることである。食糧増産する手段として畜産や養殖が大いに貢献していることは否定できない。日々大量に使われる薬剤がその生産にとって欠かすことができないものであり、そのお陰で我々消費者の胃袋が満たされているとも考えられる。 薬剤耐性サルモネラ菌出現の問題は、食生活、特に先進国における食料の大量消費について考えなければいけない大きな問題であり、なぜこのような問題が起きてくるのか、一人ひとりが考えていかなければいけないことだろう。 なお、サルモネラ菌食中毒は、生卵を食べるという世界的に珍しい民族である日本人にとって非常に身近なものだが、この点については別の機会に書いてみたい。さらに人用の抗生物質使用量では、日本と香港が世界的にみて著しく消費が多いところだという。風邪の診断を受けて抗生物質を処方された経験は多くの人にあるはずだ。風邪に効く抗生物質などありえないが(本物の風邪薬ができればそれこそノーベル賞もの!)、肺炎球菌などに2次的に感染のを防ぐために処方しているものと思われる。このような使用法が正しいとはとても思えない。

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H5N1ウイルス、人用ワクチンについて

現在、鳥インフルエンザに対して厳戒態勢にあるが、これは今後生まれてくるであろうと予想されている人の新型インフルエンザウイルスに対する対策でもある。新しいインフルエンザウイルスはいつ生まれてきても不思議ではなく、もし新型インフルエンザウイルスの感染者があらわれれば、何の免疫もない人類に対して、ごく短時間のうちに甚大な被害(感染死亡者)をもたらすのではないかとWHOはじめ各国専門機関は警戒しているが、一方でワクチンの開発も急速に進んでいる。 先月、グラクソ社が3.8μgの抗原量で有効なワクチンを開発し、医学誌「ランセット」 に発表して世界的反響を呼んだところであるが、昨日はサノフィ・パスツール社が1.9μgで有効なワクチンの臨床試験に成功したことを発表している。 現在のインフルエンザワクチンは3種類の抗原がそれぞれ15μg使われている。ちなみにこの冬に向けて使われるワクチンであればA型ソロモン諸島(H1N1)A型ウィスコンシン(H3N2)B型マレーシアこれらが各15μg(合計45μg/0.5ml)含まれている。(接種量は0.5ml) 新しく開発されたH5N1人用ワクチンは、現在使われているインフルエンザワクチンに比べて、極少量で効果が期待できるものであり、それだけ大量のワクチンを短期間に製造できることを意味する。また現在のインフルエンザワクチンは鶏の有精卵を使用しなければ製造できないが今回開発されたH5N1用ワクチンは、まったく別の方法で製造されることから大量製造が可能となり、世界人口をもカバーできるようになるという。 新型インフルエンザに関しては、世界的に抗ウイルス薬タミフルの備蓄が進んでいるが、今後はワクチンの備蓄や接種が大流行対策として世界的主流になる可能性が期待できる。 新型インフルエンザの元となるであろう鳥インフルエンザウイルスは、その性質を少しずつ変化させているので、最終的に人ー人感染を起こす危険なウイルスがどのような形になるのか、確実なところは今も不明のままだ。ただしある程度汎用的なワクチンが開発されているものと思われる。今後さらに臨床試験を継続し安全性と大量供給の方法について詰めて欲しいものだ。

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広州にてH5N1に感染したアヒルが大量死

昨日の香港の各紙の報道によると、広東省広州市番禺にてH5N1ウイルス(亜型)によると思われる感染で、9830羽のアヒルが死んだという。これは9月10日から12日にかけて9戸のアヒル養殖場で起きており、当局は13日に約3万羽のアヒルを殺処分した。 今回アヒルの大量死をもたらしたウイルスは、H5N1に近い亜型と思われているが、その毒性は従来のH5N1よりも強いものだ。(強毒性タイプ)H5N1は元来ニワトリに対しては非常に強い毒性を示しているが、水鳥や渡り鳥にはそれほどの毒性はないために、症状がでない不顕性感染の状態で彼らは運び屋としての役割を果たしている。今回疑われているウイルスはこの「運び屋」さえ殺してしまったことになる。実はこのような水鳥への感染は2003年、2004年に中国西部の青海湖で報告されて以来、たびたび起きている。青海湖は多種類の渡り鳥の生息地として有名で、ここを通過した渡り鳥が各地に移動することで、ウイルスが世界中に伝播するのではないかと警戒されていた。 さらに今回のケースでは、鳥インフルエンザワクチンを接種されていたアヒルで起きており、ワクチンが開発された当時とは違うタイプのウイルスに遺伝子変化している可能性も考えられる。このワクチンは1回の接種で65%、2回接種して90%の効果が期待できるものであるが、今回死んだアヒルは1回接種を受けていただけなので、実際に遺伝子の変化がおきているのかどうかは、さらなる調査結果を待つしかない。 鳥同士の感染性や毒性がそのまま人間に当てはまることはないので、今回の件で慌てることはないが、インドネシアなどで人への感染がたびたび起きていることを考えると、今回のウイルスも性質が変化してきている可能性も考えておいたほうが良い。今のところ番禺では人への感染事例は起きていないようだが、今後十分に警戒監視する必要はあるだろう。またこのような村では豚も飼っていると思われるが、人のインフルエンザウイルスにも、鳥のインフルエンザウイルスにも感染するブタは、その体内で両者が遺伝子融合して新しいインフルエンザウイルス(新型インフルエンザ)をつくりだすインキュベーターの役割を果たす。今回、アヒルを殺した強毒性ウイルスが、豚にも感染していないか心配される。人のインフルエンザが流行するとその危険性がますます高くなるので、次期インフルエンザシーズンが来る前になんとしても完全に自体を沈静化させる必要がある。 現在のところ中国や香港に住んでいるからといって、特に注意しなければいけないことはない。鳥には近づかないことはこれまでと同じだ。野鳥が死んでいたりしても決して触れないようにしたいので、特に難にでも興味を示して触りたがる子供には十分注意してほしい。現在のところ、今回のウイルスに限らず鳥インフルエンザウイルスに人が感染する危険性はほとんどないと思われるが、市場などで生きた鳥を売っている場所には行かない方が無難だろう。当然のことながら調理された鳥肉には、たとえその鳥が感染していたとしても、食べた人が感染する危険性は全くないので、鳥料理を避ける必要はない。生の鶏肉を調理するにあたっては、鶏肉に触れた場合に、しっかり手洗いすることはカンピロバクターなど鳥由来の食中毒を予防する上でも大切なことだ。 通常のインフルエンザでも鳥インフルエンザでも、あるいは新型インフルエンザであろうとも、感染予防はよく手を洗うことに尽きる。外出後はもちろん、食前など必ず手洗いすることを習慣にしたい。また十分な栄養摂取、適度な運動、そして睡眠をしっかりとるなどなど身体を十分に休めて、免疫力を落とさないようにすることが大切だ。

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世界自殺予防デー

毎年9月10日はWHOが定める「世界自殺予防デー」だ。日本での取り組みは今年が初めてで、この日から1週間は「自殺予防週間」として、国や各自治体、あるいはNPO団体など様々なところが自殺予防に向けた取り組みを行なう。 日本の自殺者は、9年連続で3万人を超えており、高い自殺率が低下する兆しは見えない。1年間の全死亡者数がほぼ100万人であるのに対して、自殺者数は約3%であり数字の上ではそれほど多いとは思えないかもしれない。しかし交通事故死が1万人を下回っていることを考えると、自ら命を絶ってしまう人々がたいへん多いということが理解できる。 自殺者の増加は社会問題だ。自殺の理由は様々であるが、病気を苦にしてという、かつてよく耳にした理由が目立たなくなり、最近では経済的困難や仕事上の悩みが理由となっているケースが目立つ。 自殺は「予防可能な公衆衛生問題」であるとも言われており、異変に周囲が早く気付き、対処することでその多くを思いとどまらせることが可能である。それだけに日常から自分の周囲に注意を向け、小さな異変をできる限り早く見つけてあげることがとても大切になる。 海外でも日本人の自殺は少なくない。香港でも日本人の自殺、あるいは自殺未遂が起きているが、中国に在住する日本人の自殺率がさらに高いという話も時々耳にする。男性の場合はやはり業務上の行き詰まり。これは任された仕事が過大で、能力以上のものを要求されたことが負担になっていたということだけではなく、環境に適応できなかったことなども原因として十分考えられることである。 監督者である上司は部下の様子をよく観察してほしい。いつも元気な挨拶だったのに声が小さくなっている、言葉数が少ないなどちょっとした変化に気づいてあげることが大切だ。もちろんこの程度のことを大げさに取り上げる必要はないが、「何かあったら、何でも相談に乗るよ」程度の声かけをしておくことは有効だ。自分に関心を持ってくれていることを感じとることで、かなり救われるはずだからだ。精神的に追い詰められてくると、自分の周囲が見えなくなる。まだ軽いうちに声をかけることは思いのほか効果が大きいといえよう。 仕事のミスが度重なる、会議中に寝てしまう、遅刻が増える、いつもボーっとしているなど、業務に支障がでてきたら強く介入したい。会社の産業医と相談したり、可能であれば一時帰国の上、カウンセリングを受けさせるなどしたい。カウンセリングのために帰国するなど、あまり考えられないかもしれないが海外では日本人のカウンセラーがきわめて少なく、その受け皿がほとんどないのが現状だからだ。どんなに言葉が達者でも、あるいは反対に現地のカウンセラーがどんなに日本語に長けていても、やはり同じ文化的背景がないと、カウンセリングの効果は得られにくい。 それだけに、小さな芽を見つけて早いうちに摘んでしまうことが求められる。会社など業務上のことだけではない。一般家庭における対応も重要なことだ。駐在員本人はよくても、配偶者が悩みを抱えているケースは決して少なくはないはずだ。海外生活を苦痛に思う配偶者もいることを、ぜひ頭の隅に置いておきたい。口数が少なくなったり、朝起きなくなったり、外出を嫌ったり、人に会わなくなってきたり、とにかくそれまでとは違うことに早く気付いてあげたい。小さなことにも声をかけてあげることは、これは上司部下の関係などでも同じこと。人間関係の基本部分にかかわることで、誰かが自分のことを気にしてくれていることを少しでも感じることができれば、気持ちの持ちようが変わることもある。 声のかけ方には注意が必要だ。真正面から相手の目を見て、というようなことは避けたい。横、あるいは斜め方向からの声かけが良いだろう。はじめはさりげなく声をかけることが大切で、大仰にしてしまうとかえって構えてしまい逆効果になる。 メンタルケアはだれにでもできる。頑張れなどとは決して言ってはいけない。とにかく反論せずに、あるいは下手なアドバイスなどしないで、とことん話を聞いてあげる姿勢が大切だ。これからは職場で上に立つ人は部下のメンタルケアのことも考えなければいけない。もちろん自分が所属長である場合もあるわけだ。単身赴任ではないのであれば夫婦間でメンタルケアができることもあるだろう。自分自身のメンタルケアのために、何でも話ができる相手を見つけられると良いのだが・・・。

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中国のHIV(エイズウイルス)感染者数急増中

「中国国務院(中央政府)エイズ予防・治療工作委員会弁公室は今年7月末までに報告されたエイズウイルス(HIV)感染者数が21万4300人に達したことを明らかにした。このうち5万6758人が発症し、1万8246人が死亡したという。また、今年上半期に報告された新規感染者数は1万8543人、発症者数4314人に対して、死亡者数は2039人となっており、同弁公室として、感染者の上昇傾向に強い懸念を示している。なお報告されていない患者も含めると、感染者数は約3倍の65万人に達すると推定される。」 上記のような内容が報道されているが、当然のことながら実際の感染者数は公表された数字を大きく上回るものと思われる。 世界のHIV感染者数は総人口に対して0.6%くらいだ。感染率は国や地域差が非常に大きく、累計患者数が0.01%にも及ばない日本に対して、世界で最も感染率が高いといわれるアフリカのスワジランド王国では、なんと3人に一人がHIV感染者といわれている。実際に世界のHIV感染者はサハラ砂漠以南のアフリカに集中しており、総人口では世界の2%にしかならないこの地域の感染者数は、世界の感染者数の約30%が集中しているというからその突出率に驚かされる。 ところで中国のHIV感染についてであるが、国務院から公表された数字が正確なものかどうかというと、かなりの疑問符がつくのではないだろうか。もちろん故意に事実を矮小化して公表しているというわけではなく、実際は検査率が低すぎて、全体像がつかめないと考える方が妥当ではないか。 ここ数年思うことであるが、中国がHIV感染に関して内外に具体的な数字を出してきていることは、それだけ深刻な事態が進行しているからではないかということだ。ほんの数年前には中国の国家機関あるいは地方機関からHIVに関して懸念を示すような数字などほとんど公表されていなかったと思う。 アフリカでの感染者数が多いのはなぜか?もちろん相当に深刻な事態に陥っていることは間違いないが、個人的な見解ではあるが検査総数に原因があるものとも思われる。発展途上国に対して直接的ともいえるほど医療行政にかかわっているWHO(世界保健機関)は、かなり正確な医療統計をだしていると考えられるからだ。 中国にはアフリカ諸国に直接かかわるような、深く入り込んだWHOの活動はない。医療行政は中国独自に管理されているだけに、そこから正確な数字が出てくるか疑問が生じるが、中国政府がこのような数字を出し始めたことは、十分に注意しなければ行けないサインであると捉えたい。

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糖尿病とアルツハイマー病

九州大学の清原裕教授(環境医学)らが福岡県久山町で行った研究で、血糖値が115mg/dl以上の糖尿病あるいはその予備軍にあたる人はそうでない人に比べて、アルツハイマー病になる危険性が4.6倍高いことがわかった。この研究は1985年の時点で、米国立衛生研究所研究機関の基準で認知症ではないと判断された65歳以上の826人を15年間追跡したものだ。 脳内でアルツハイマー病の原因となる物質を、インスリン分解酵素が分解している。そのため通常ではアルツハイマー病にはなりにくい状態が保たれる。しかしインスリンが不足するタイプの糖尿病患者では、その分解酵素も同時に減少してしまうため、アルツハイマー病になる危険性が高まると考えられる。もちろん脳内に蓄積され、アルツハイマー病の原因となるとされる物質も複数分かっている上に、それを分解したり掃除したりする働きのある物質もあることが解ってきているので、今回発表された糖尿病との関係がすべてというわけではないが、統計上このようにな顕著な数字として現れたことは非常に興味深いことだ。 これとは別に40~79歳の約2400人を1988年から12年間追跡したところ糖尿病の人は、そうではない人と比べてがん死亡の危険性が3.1倍になることや、脳梗塞で1.9倍、心筋梗塞などの虚血性心疾患でも2.1倍も死亡リスクが高くなることがわかっている。 失明、末端壊死(四肢切断)、透析が必要となる腎疾患などQOLを著しく低下させる合併症が問題となる糖尿病は、現在最も重要な生活習慣病とされている。対策が急がれているものの、ここ十数年の間に血糖値がうまくコントロールできていない人(耐糖能に異常がある人)は、男性で4割、女性で2割も増えている。 糖尿病は遺伝など体質的な要因もあるが、過食、肥満、運動不足がその大きな原因となっており、予防やその改善には個人で対応できる、あるいは対応しなければいけない部分が非常に多い。今回、アルツハイマーとの関係が疑われることとなり、このニュースを見て何とかしなければいけないと自覚をした人もいることだろう。 特に家族内に糖尿病患者がいる人の場合は、すでに「糖尿病発症」への切符を手にしているともいえる。この切符を使って「糖尿病行き」の列車に乗るかどうかは個人の判断だ。もちろんその切符を持っていない人でも、現在「肥満行き」の列車に乗っている人も多い。この列車は途中で「糖尿病行き」になってしまうこともある。これらの列車に乗るのか、あるいは乗っていてもうまく途中下車できるかどうかは本人次第といえる。 とにかく太らないこと、食べすぎないこと、そしてなるべく体を動かす努力をすることが大切だ。無駄な動き、つまり普段ならしない動作で1kcalでも余分にカロリーを消費しようとすること。肥満は一般に長い年月をかけて形成されるものであって、それを短期間に解消しようとしても無理が生じる。はじめはやせることではなく、今の体重よりたとえ100gでも増やさないようにするという意識を持ちたい。 アルツハイマー病も中高年が心配する病気のひとつだ。糖尿病のリスクを減らしすことは、アルツハイマー病の予防にもつながるのであれば、まさに一石二鳥といえるだろう。

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若返りの秘薬「プラセンタ」で狂牛病発症

美容界で若返りの秘薬?として広く使われているプラセンタは羊や豚、あるいは人の胎盤から製造されているものだ。一昔前には日本でも人の胎盤が回収されていたと聞くが、現在ではその多くは羊や豚の胎盤から生成されているのではないだろうか。 胎盤は昔からその効能が伝えられており、中国などでは胎盤を食べることもあると聞く。中国に限らず、ヨーロッパの一部では出産後に夫婦で胎盤を食べるという話もあるそうだ。当然ながら化粧・美容品として応用されることは、何もおかしなことではない。 さて、今回の狂牛病感染だが、これは台湾での話だ。美容業を長く営み、自分自身でも若返りのためプラセンタを長く注射してきた49歳の女性が体調を崩し大学病院を受診。MRI検査の結果、狂牛病(クロイツフェルトヤコブ病)的脳の病変(海綿空洞化)が認められ、記憶力の減退も著しく、四肢無力で臥床し、植物人間化してしまったという。この女性は外国旅行もせず、臓物も食べず、家族歴もないことからプラセンタの使用が原因で狂牛病になったものとされた。 日本人でもプラセンタの愛用者は多く、美容機関では広く使用されているが、問題はその原料だ。羊胎盤は、昔はよくつかわれていた。リスクを知らずに羊を原料としていたのだが非常に危険だ。狂牛病は牛の病気だと思われがちであるが、羊が「ヤコブ病」の大元だとする意見は根強く、感染羊の肉骨粉を餌として食べさせられた牛が発病したのが狂牛病といわれる。もちろん異常プリオンを含む肉骨粉を豚が食べさせられていたとなると危険性は同じだ。異常プリオンは人を含む多くの哺乳動物に感染する。 狂牛病の原因は異常プリオンだ。ごく微量で感染するばかりか調理程度の過熱ではその感染性を失うことはなまずない。つまり異常プリオンが注射用プラセンタに微量でも混入しようものなら、感染してしまう危険性は極めて高いといえる。 そもそも動物由来のものを気安く注射することに問題がある。治療薬としてリスクも覚悟の上で使うのであれば仕方がないが美容や若返りといった理由で使用する場合は、原料の由来まで調べてからでないと怖くて使えない。現在、プラセンタを使用しているのであれば、その原料にまでさかのぼって調べてみてはどうだろう。

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インフルエンザ予防接種

今年もインフルエンザの予防接種を香港で受けることができるようになった。まだ暑い夏日が続いているのでインフルエンザといわれてもピンとは来ない。しかし真冬の流行期に向けてすでに準備が始まっている。 毎年5月終わり頃にWHO(世界保健機関)から各国政府に対して、次期インフルエンザシーズンの流行予想が通達されこれにしたがって製薬会社に製造が委託される。インフルエンザワクチンの製造には鶏の有精卵が必要で、製薬会社では流行を予想しながら、この時期に卵の確保を行なう。新しいワクチンが製品化され医療機関への出荷されるのは毎年8月下旬から9月にかけてだ。 2007年ー2008年冬季流行予想に基づくワクチンの成分は、A型ソロモン諸島(H1N1)A型ウィスコンシン(H3N2)B型マレーシア これらはあくまでもこれまでの流行から予想されるものであって必ずしもあたるとは限らない。したがって、せっかく予防接種を受けても残念ながら感染してしまうこともある。もちろん鳥インフルエンザや新型インフルエンザには無効だ。 それでも感染機会を減らすことができ、万一感染した場合の休業による不利益などを考慮すると、接種しておくほうが良いのではないかと思う。もちろんインフルエンザ予防接種については、その可否について議論されることが多いので、接種に関してはあくまでも任意であることが望ましいだろう。 接種を希望する人は、年毎に大きく変動する。場合によっては不足して混乱することもあるので、希望者は早めに最寄の医療機関に問い合わせてみて欲しい。効果は接種後3週間後くらいからなので、インフルエンザシーズン(香港では年明けから)になって接種しても期待する効果が得られないこともある。また接種後の効果は約1年といわれるので、早めに接種することは問題ない。

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小児高血圧症が増えている

香港衛生署によると、香港の子供(小学校5年生から中学生)の2~3%に高血圧症を認めるという。これは今朝の新聞での報道であるが、このところ肥満児が増えている香港では当然といって良い結果だと思う。 子供の高血圧症の基準は成人のものより若干低めで判断される。中学生では大人とほぼ同じく判断しても良いが、小学生の場合は最高血圧も最低血圧も共に10mmHg程度低い値で判断しなければいけない。 高血圧症というと大人の病気という認識が強いが、最近では高血圧に限らず高血糖(二次性糖尿病)も増えているそうだ。原因の多くは大人と同じく食べ過ぎや運動不足だ。 香港の子供には肥満はいない、というのが私が香港に来た当初の印象であったことを今でも覚えている。18年も前のことであるが、そのころは日本で小児肥満や糖尿病が話題になり始めていた時期に重なる。 当時に比べて現在の香港は何が変わったのか、何が小児高血圧症患者を増やしているのか。ここ10年ほど、香港で肥満の人が非常に増えてきているという印象を強く受ける。大人だけではなく、かつてあまり見なかった小児肥満も非常に多い。なぜなのかと原因を考えてみたが、これは間違いなく食生活の変化といっても良いだろう。 マクドナルドやケンタッキーといったファーストフード店がやたらと増えている。甘い飲み物を出す店も増えており、ベビーカーの小さな子供が大きな容器に入ったジュースを両手で抱えて飲んでいる光景も目にする。あの量は、大人に換算すれば2~3リットルにもなるはずで、間違いなく糖分の摂取過剰だ。 子供に好きなように食べ、飲ませしている認識不足の大人に、子供にはかつては見られなかった病気を増やしている大きな原因がある。ゲーム機の普及もてつだって運動不足になりやすい環境をさらに悪いものへと導いていることも原因だ。しかしゲームばかりしているといって、運動不足をそのせいにしてしまいがちであるが、原因はそれほど単純ではない。。 子供の肥満には遺伝的な要因なども大きく、生活習慣ばかりが原因となっているというわけではない。食事などにも気をつけているのに、なぜ子供が太ってしまうのか、親としても原因がわからず悩んでいる人もあるはずだ。メタボリック症候群についても最近議論されるが、太っていることが必ずしも悪い訳ではない。これは子供の場合でも同じ。肥満が原因で循環器系の病気の心配はないのか、つまり血圧や血糖値などが上昇してきていないか、そこを知ることが最も大切なことだ。一度は検査してみることを勧めたい。その意味で、今回衛生署が公表した調査結果にある血圧測定は、簡便な検査として非常に有効だと思う。

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子宮頸がんの原因―多くが知らず

香港大学が行なった「子宮がんの原因についての一般女性の認識に関する調査」で、正しい認識を持つ人が極めて少なく、その多くは原因を誤解していることがわかったという。 子宮頸がんの原因は何かと問う質問に対して返ってきた回答は、公衆トイレの便座の使用、大気汚染、タオルの共用、睡眠不足、不健康な食事、頻繁な性交渉、遺伝、運動不足、ストレス・・・等だそうだ。 香港人は公衆トイレでは便座に座らないからトイレがたいへん汚いという話しを聞いたことがあるが、このような理由もあったのかと改めて納得してしまった。ここに上げられた回答はすべて間違いだ。強いて言えば性交渉が近いといえるが、正確な解答として多くの人に「HPV感染」をあげて欲しかった。ただし現時点において、私は一般に対してこの回答を求めるには難しすぎた質問ではないかと思う。結果は仕方がないので、今後の啓蒙活動にぜひ生かして欲しいものだ。 子宮頸がんの原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)であることがわかっている。HPVには性交渉で感染し、感染が長期間持続してしまった場合にがんを発症させる危険性がある。パピローマウイルスは現在100種類以上が発見されており、この一部が発がんに関与しているほか、通常のイボの類も同じ種類のウイルスが原因とされる。また性感染症の尖圭コンジローマも同じだ。もちろんイボががんの原因になることはない。 子宮頸がんや尖圭コンジローマを予防する目的で、すでにワクチンが米国FDAで認可(2006年6月)されている。日本では今のところ治験段階ではあるが、米国で行なわれた大規模臨床試験では、未感染の女性に対して80%程度の効果が認められて、さらにすでに感染してしまっている女性に対しても一定の効果が期待されている。香港でもすでに接種が可能なので、中学生以上の女性には接種を考慮しても良いだろう。 接種は半年をかけて3本おこなう。現在のところその費用は3000ドル以上。しかも肝炎予防接種のように、これで100%の予防が期待できるというものではなく、毎年の婦人科検診を免除できるという性質のものでもない。早期で発見すれば100%治るがんだといわれている子宮頸がんに対して、どこまでその予防に関して費用負担できるかということに関して、意識レベルに個人差が非常に大きいことは確かだ。もし全員が予防接種を受けるのであれば、子宮頸がんの患者が激減することは確実で、その意味でもワクチン価格を大幅に安くすることが今後の大きな課題になろう。 ここまで読んで、男にはほとんど関係ないと思っている人も少なくないかもしれないが男性はウイルスの運び屋だ。その「意味」をしっかりと認識する必要がある。 またすでにHPVに感染していることを健康診断等の結果で知らされている女性もいると思うが、HPVに感染したら確実にがんになるということではなく、あくまでも持続感染した場合にそのリスクが高くなるということだ。感染者は半年に1度の検査を行なえば安心だ。もちろんウイルスがいつの間にか消失することもある。 胃がんの原因になる「ヘリコバクターピロリ」、子宮頸がんの原因になる「HPV」など微生物もがんの原因になることが知られている。特にこの2種類は健康診断でも簡単に検査できる。早く感染を知って、適切に対処することで、がん発症のリスクを下げることが可能だ。