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香港でH5N1感染鶏

香港の下町、深水渉の市場でH5N1鳥インフルエンザウイルスに感染している鶏が見つかった。問題の鶏は保安道街市の家禽売場から20羽をサンプル調査したうちの5羽。H5N1感染が判明した後、調査範囲を広げているが、今のところ新たな感染は認められていない。香港政府は関連する市場(街市)の鶏、約2700羽をただちに殺処分にしている。 香港政府としては、異常死の鶏からH5N1感染が判明したわけではなく通常のサンプリング調査で発見されたことから、政府の鳥インフルエンザ対策が有効に機能しているものとして評価している。ちょうど端午節にあたり、通常より鶏の消費が増える時期であったが、市民の受け止め方も比較的冷静だ。 新聞などでは大々的に報道されているので、不安を感じる日本人も少なくはないかもしれないが、今回のケースはあくまでも鳥の病気として見つかっているもので人に感染したケースではないので、まったく心配はなく、もちろん鳥をつかった料理を控えるといった必要などない。 そうはいうものの鳥インフルエンザが人に直接感染することで、2003年以降これまでに世界中で241人が死亡しており(2008年5月28日WHO公表)、また感染しても症状が出なかったはずの渡り鳥が死ぬこともあるなどウイルスの性質が変化してしてきていることもたしかで、十分注意しなければいけないことは確かだ。(感染しても無症状の渡り鳥がウイルスの運び屋となっている) 生きた鶏には近づかない、死んだ野鳥には絶対に触れないこと、自宅で飼っている鳥の籠を外に出すなどして野鳥との接点をつくらないといったことは最低限守らなければいけない。 鳥インフルエンザが身近になるにしたがって、近い将来に現れるであろう新型インフルエンザへの備えとして、抗インフルエンザ薬「タミフル」を企業備蓄する動きも多くなってきた。 確かにタミフルは新型インフルエンザに大しても効果的な医薬品であり、特に先進国では国家レベルでその備蓄量を増やしている。しかし企業や個人までもが備蓄することに必ずしも賛成はできない。特に企業備蓄するにあたっては、どのような段階で、誰が、誰の責任で、どのようにして社員やその家族に配布するのかしっかりしシミュレーションしておくべきだろう。もちろんタミフルにのみ頼っていることも良いこととはいえない。 日本や香港では世界的にタミフルの使用量が格段に多い。香港ではウイルスの確認検査をすることなく、症状だけでインフルエンザだと診断してタミフルを処方していることが多いが、このような大量使用ですでに一部のインフルエンザウイルスはタミフルに抵抗性をつけている。こにょうな乱用が今後も続くとせっかく国家備蓄しているタミフルが無駄になってしまう可能性もないとは言えない。 どのような感染症でも、全員が感染発症するということはない。インフルエンザに感染しないように免疫力を維持することも大切だ。薬を頼りにすることも必要であろうが、ウイルスを殺すのはタミフルではなく免疫力によるものであることを考えると、その強化を考えておくことも忘れてはいけない。

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食品衛生監視員も疑問を呈す食品偽装事件

 5月17日、18日に横浜で「食の安全を考えるつどい」が開催されました。この会は保健所勤務の食品衛生監視員の有志が企画し、全国の食品衛生監視員、営業者、消費者が集まり、食品の安全について話し合う会です。今回はサイエンスライターの松永和記さんもパネラーとして参加されました。泊り込みで多くの方と夜遅くまでお話しすることができ、大変有意義でした。この会に参加して、私が感じたことを書いてみます。  「食品偽装と食の安全を考える」と題したシンポウムでは、まず3人の演者が持論を展開しましたが、既にマスコミで報道されているような建前論ばかりでした。その後松永さんが、FoodScienceの「松永和紀のアグリ話」に書かれているような科学的な真実に迫る話をされると、会場の雰囲気が一変しました。食品衛生監視員や生協の方の発言がにわかに活発になったのです。現状について疑問をもっている食品衛生監視員がいかに多いのかがよく分かりました。  食中毒の発生は珍しいものではなく、ニュースとして報道しても視聴率が取れないそうです。しかし、食中毒の取材は難しく、行政の発表資料だけで済ませるため、記事も小さな扱いになります。一方、食品添加物や農薬といった化学物質は、未知な物に対する恐怖感から視聴率が取れ、めったに発生しないので興味を引きやすく、繰り返し報道されるということです。  中国のギョーザ事件も専門家が少し考えれば、混入ルートは原材料の野菜からでないことは容易に推理できるはずなのに、延々と中国の野菜の農薬散布の映像を流し続けていました。マスコミの記者の勉強不足とテレビに登場するコメンテーターの作る空気に迎合した意見が多過ぎると思います。  パネラーの1人に、小さな表示ミスで商品の回収、廃棄を行なったシュウマイ製造業者がいました。私が質問表に「どうして廃棄まで行ったのか。食品の安全性には問題が無いので表示の張り変えで良かったのではないか」と書きましたところ、「苦渋の選択でした。訂正したシールを張り、店頭に断りの張り紙をしようと考えたのですが、販売店側の意向が強く、回収、廃棄ということになったのです」と答えてくれました。  このシュウマイ製造者による回収事件の後、同様な事件が頻発したため、新聞に社告を出すことになりました。その結果として、新聞社が利益を上げています。このように安全な食品を、マスコミの見えない圧力で廃棄を続けていることについて、考えなければなりません。私が食品衛生監視員の時も表示違反や軽度のミスは発生していましたが、回収、廃棄処分は限られていました。処分は慎重に法の規定と安全性を考慮して行なっていました。現在は誰がこのような処分のルールを作っているのか分からない状態です。行政指導ではないようです。 (食品衛生コンサルタント 西村雅宏)

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強壮薬など6種類の薬の薬の服用停止を呼びかけ

香港衛生署は6種類の強壮薬やダイエット薬の服用を停止するよう市民に呼びかけている。これは成分に含まれている化学物質が循環器系に対して作用し、血圧や心臓に重篤な影響を与えると認められるためだ。 衛生署が指定した薬は「男士強草本膠嚢」など6種類であるが何もこれらの薬に限ったことではない。弊社のお客様の中で、原因不明の肝機能障害を認めた日本人女性の場合、ただのお茶と思って飲んでいた痩身茶に食欲を落とす西洋薬が添加されていたのだ。服用を停止して再検査したところ肝機能は全く問題ないレベルにまで回復している。 肥満にしてもEDにしても、治療が必要であれば医師の管理下で薬を服用するべきで、自分自身で勝手に入手した薬を飲むのは危険だ。 そもそも短期間に痩せようとすること自体が間違いであり、事故の元にもなる。脂肪を燃焼するだの、排泄するなどといってその効能を宣伝している商品が山とあるが、体内の代謝システムはそんなに簡単なものではない。体内で燃焼するといっても、短期間であれば必然的に発生する大量の熱はどこに行くのか。脂肪を排泄するというが、体内の脂質がいったいどこから排泄されるというのか。便?尿?汗?・・・どれもありえない話だ。 ED改善サプリでもおなじ。こっそりどこかで買ってきた薬で何とかしようとしたり、もっと良いことがあるのかと期待して飲むなど絶対に止めた方が良い。最悪「死亡」の危険性だってあり得る。決して笑って済ませられるような問題ではない。FDAで認められている医薬品が混ぜられている場合もあるが、サプリメントのつもりで飲んでいると思わぬ重大な副作用に見舞われるリスクもある。 巷にあふれる得体の知れないサプリメント。過大に効果を期待して買い求めることは危険だ。もちろん問題がないものもたくさんあるだろうが、効能だけを謳っているものは避けるべきだろう。 特に痩せ薬。楽してやせようとしてもリスクが大きすぎる。生活習慣を改善することを最優先したい。

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サルモネラ中毒

香港の学校で行なわれたスクールパーティーで出されたパンケーキが原因となり、128人がサルモネラ菌に感染したことが5月8日に衛生署より公表された。 問題のスクールパーティーは4月26日に開催されたが、その後、幅広い年齢層の参加者(1歳から59歳)から食中毒症状の訴えが続発し、患者は男性56人女性72人にも及んだ。 衛生署で集団食中毒事例として患者サンプルを検査したところ、そのうち34検体からサルモネラ菌を検出したほか、ひとりからは血液検査でもサルモネラ感染が証明されたため、集団感染が確実となった。原因食品(パンケーキ)になぜサルモネラ菌が混入したのか不明であるが、卵を使っているのであれば、卵に由来するサルモネラ菌が原因である可能性も考えられる。 サルモネラ菌中毒で最も多いのが卵を原因とするものだ。卵かけご飯やすき焼きなどで生卵を食べる習慣がある日本では、すべての食中毒の2~3割がサルモネラ中毒だといわれる。ティラミスが流行した年には患者が激増している。 卵には5000個に1個くらいの割合で、その内部にサルモネラ菌が入り込んでいるといわれる。日本の卵の賞味期限が短いのは、そのサルモネラ菌(インエッグと呼ばれる)が食中毒を引き起こすレベルにまで増殖する日数に安全係数を掛け合わせたのだ。もちろん卵が原因となるサルモネラ中毒をゼロにすることは不可能であり、感染予防には消費者の注意も必要になる。 一般に日本の卵は外側を塩素消毒してあるので衛生的といえるが、それでも卵を触ったときはそのつど手洗いすることは常識だ。前述のように卵の中にサルモネラ菌が入り込んでいることがあるので、割った卵は迅速に使うことが大切で、いつまでも室温に置いておく事は避けたい。また卵を大量に使うレストランなどでは、多くの卵を一度に同じ器に割るようなことは避けたほうが無難だ。これはサルモネラ菌を含むたった1個の卵が、まとめ割りしたすべての卵を汚染させてしまうことを避けるためだ。 たとえサルモネラ菌が食中毒を起こす菌数に増殖していた場合でも、確実に加熱すれば中毒の心配はなくなる。その意味では半熟程度が美味しいといって加熱を抑える親子丼が意外なリスクになることも専門家が指摘している。 これから当分の間、食中毒が起きやすい気候が続く。冷蔵庫を過信することなく、食品の衛生管理に十分注意し食中毒を起こさないようにして欲しい。 食中毒患者が一番多く発生しているのは、実はレストランではなく一般家庭であることを覚えておきたい。

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インフルエンザについて

インフルエンザ流行に伴い3月14日から2週間にわたって小学校以下の全面休校措置がとられた香港では、その後インフルエンザの発生は沈静化していたが、4月29日に突然38名の患者発生が報告された。すべてがインフルエンザと確定診断されたわけではないが、患者は1歳から9歳、72歳から101歳というように、免疫力が一般的に低いといわれる小児と高齢者だ。 さらに30日には二つの小学校と幼児施設にて合計10人がインフルエンザ様疾患に集団感染していることが判明している。 衛生署では、インフルエンザ流行観測を行なっている施設からの患者発生の報告はなく、更なる流行に繋がることはないとしているが、インフルエンザの予防に関しては市民に呼びかけしていくという。 日本では唯一沖縄でインフルエンザの警報がまだ発令されている。(先週時点)さらに長崎県でも注意報が出されているなど、現在でもインフルエンザ感染に注意しなければいけないことは確かだ。今回香港で突然インフルエンザ流行が起きたとしてもおかしなことではない。 現在最も懸念されている新型インフルエンザの発生は夏に起こることも考えられるため、患者が多い冬に限らず、インフルエンザ対策は常に行っておく必要がある。 免疫力を高く維持するために香港政府は  1、適切な食事 2、定期的な運動 3、適切な休養 4、ストレスを少なくする 5、禁煙する といったアドバイスを行なっている。もちろん外出から帰ったときの手洗いは忘れてはいけない。これらはインフルエンザに限らず、多くの感染症の予防に有効となるもので、日頃からぜひ心がけて実行しておきたい。

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魚の水銀汚染

香港の政府機関である「食物食物安全中心」は昨年4月から8月にかけて集めた魚類280サンプルに対して実施した有機水銀量調査の結果を公表した。 その結果多くの魚から有機水銀を検出したが、中でも深海産の魚3種類から認められたものは許容量を大幅に上回っていた。特に金目鯛からは基準の2倍を超える有機水銀が検出されており、その危険性から摂取を制限すべき筆頭にあげられている。 今回の調査に限らず、特に外洋性の肉食大型魚(マグロなど)の水銀汚染は、食物連鎖の関係で体内での有機水銀の蓄積が進んでいることから、その摂取に関して大幅に制限したほうが良いということは、米国FDAなどからこれまでも勧告されている。 水銀は環境汚染と強く関連するが、火山など自然界からの供給も少なくはない。地上や大気中の水銀はやがて海水に溶け込み、最初にプランクトンなど微生物に摂取される。このプランクトンを稚魚が捕食し、このような小さな魚をより大きな魚が餌とする。さらに大きな魚に食われていくという連鎖を通して水銀は濃縮されていく。 有機水銀は神経に対しての毒性が強く、特に胎児に対しての影響が大きいため、妊婦の魚の摂取に関しては注意が必要であることは確かだ。しかし他方、魚は良質の蛋白源であるほか、EPAやDHAといったオメガ3不飽和脂肪酸を多く含み、積極的に摂取したい食品であることも間違いない。 魚の種類によって含まれる有機水銀量の幅はかなり大きく、摂取を控えるものと全く意識せずに食べても問題がないものまで様々だ。一般に大型の肉食の魚(マグロ、サメなど)は体内の水銀濃度が高いと判断しても良い。それに対して近海の比較的小さな魚(イワシや秋刀魚など)は比較的汚染は少なく、摂取制限はほとんど必要ないレベルだと考えられる。 妊婦に関しては注意が必要であるが、魚を単に水銀汚染という観点のみで闇雲に摂取を控えるといった自己規制は無用ではないだろうか。コレステロールが高いといって一部の食品を極端に控えてしまうのと似ているが、ある食品を近視眼的に一方向からのみとらえて判断することはばかげている。 このところ食品に関しては話題が尽きないが、情報に流されることなく、冷静な判断力を持って対処したいものだ。

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E型肝炎感染者数激増

香港でE型肝炎患者が増えているという。衛生署衛生防護センターによると、2000年には11件だった感染者数が2007年には64件になっており、今年は4月15日までに45件にもなっており、今後も感染者数が増えることは間違いないだろう。感染経路は飲食物であり、不衛生な飲食物はもちろん海産物などの摂取にも注意するよう呼びかけている。 E型肝炎の感染経路は、飲食物からの経口感染が主でまれに血液を介して感染することも判明している。急性肝炎としての性格から慢性化することはないが、時に劇症化することがあり、死亡率は1~2%となる。また妊婦が感染すると劇症化率がかなり高くなることがわかっており、この場合の死亡率は20%にも達する。 世界的に広範な地域で感染リスクがあるE型肝炎であり途上国に限らず日本でも感染・発症事例が複数報告されている。その多くは野生シカやイノシシを生で食べたケースで、日常的に感染に注意が必要というレベルではない。ただし豚が感染原と考えられることが多く、豚肉は十分加熱することや調理の過程で生の肉汁などが他の食品を汚染しないように注意することが大切だ。 通常、生で食べても良い動物肉は、牛肉、馬肉くらいではないだろうか。例外的に他にもないわけではないが、いずれにしても飼育から加工に至るまでそれなりの管理がなされたものであって、野生動物を生で食べるのは、E型肝炎に限らずきわめて危険な行為だ。なお、日本のレストランで牛レバーの刺身を供していることもあるが、これはE型肝炎との関連ではないものの、保健所としては好ましくないメニューとされていることが多いそうだ。 話しを香港に戻そう。香港でE型肝炎感染者が増えた時期と、寿司をはじめとして生ものを食べる人が増えた時期と重なるように感じる。生のサーモンを買って、自宅で切り分けたりしていることも十分考えられるが、同じまな板で豚肉を切っていないだろうか。もともと刺身など食べる習慣がない香港で、急速に生食が流行りだしそれに伴って感染症も増えているのではないかと、個人的には考えている。 昨年の感染者数が64件となっているが、症状がほとんど出ないことも少なくはない。実際には公表された数字の何倍もの感染者がいるに違いない。前にも書いたが外食で生ものを食べるときは、きちんとした衛生管理がなされている(少なくともそのように思われる)店を選びたい。

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結核患者の集団発生ー青森県弘前市

今では忘れられた存在に近い結核であるが、実は現在でも多くの患者が発生しており、油断ならない病気であることを改めて思い知らせてくれる事例が青森県弘前市役所で起きている。 青森県は、同県弘前市役所の職員、男女28人が結核に集団感染したことを11日発表した。このうち40歳代の男性が入院中で、5人が通院治療を受けている。 昨年10月、市職員が結核を発症。その後今年1月から3月にかけて職員ら5人が相次いで発症したことから保健所で調べたところ、10から60歳代の22人の感染が判明したという。 日本の結核患者は戦後減少を続けてきたが、あるときから患者が増加に転じ、ほんの10数年前には、新規患者発生数が人口10万人当たり30を超えたことが大きな医療・社会問題化した。厚生労働省はじめ各地の保健所が当時かなりの危機感をもって対策にあたったことでその後は患者数が徐々に減り、現在では全国平均で20程度にまでなっている。 さて、最近10年間の香港での結核患者数の推移であるが1998年の7673人をピークに減少を続け、昨年2007年は5545人(約28%減)となっている。この間、人口が増えたことも考慮すると、香港の結核対策はうまく進められていると判断しても良さそうだ。それでも人口10万人あたりの新規患者数は約80もあり結核感染には十分な注意が必要な地域であることに変わりない。 香港在住の日本人にどのくらい結核患者が発生しているのか実数はつかめないが、日系の会社内での香港人スタッフの発症などを考えると、日本人或いはその周囲での結核患者発生はかなりの数になるのだろう。もちろん日本人駐在員自身が感染した事例もある。 これまで社内で結核患者が出たことに関して何件か相談を受けたことがある。社内で患者が発生した場合は同じオフィス内のスタッフの感染調査を行なう必要がある。まずは患者からの排菌の有無を確認すると共に、必要であれば医師と相談しつつ社内の感染拡大がないかを慎重に調べたい。 結核は症状に乏しいこともあり、知らないうちに周囲に感染を広げてしまうことが少なくない。原因不明の咳が続くなど症状があるときはもちろんであるが、定期健診での胸部レントゲン撮影は、欠かさないようにしたい。肺がんの検査には大きな意味がないといわれるようになってきた胸部レントゲン検査ではあるが、特に結核患者の発生が多い地域では「結核検診」としての意味合いは大きい。 結核菌の感染力はそれほど大きくはないが、発症すると治療には長い期間が必要となる。今後も十分注意しなければいけない感染症だ。

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今年初めてのコレラ患者発生

衛生署は今年初めてのコレラ患者の発生を、4月7日に発表した。患者は26歳の女性で、水様の下痢、腹痛、めまい、吐き気を先月31日に訴え、現在はクイーンエリザベス病院に入院しているが、症状は安定している。検査の結果、この女性はエルトール小川型コレラ菌に感染していることが確認されている。 患者は先月29日から今月2日までフィリピンを旅行しているが、フィリピンで感染したのか、あるいは香港で感染したのか、感染経路を含めて目下調査中とのことだ。またWong Ti Sinにある自宅で同居している家族には2次感染は起きていないという。 香港では2003年7名、2004年5名、2005年5名、2006年1名、そして2007年3名というように、毎年コレラ患者が発生している。多くは香港外への旅行中に感染したものと思われるが、香港でエビを生食して感染したケースも複数報告されている。これはタイ料理店で出されたエビの刺身?が原因食だ。生のエビを背開きにして香辛料を乗せた料理であるが、このエビがコレラ菌に汚染されていたために立て続けに患者が発生したことが、以前報告されている。 コレラに限らず通常の食中毒に関しても同じことが言えるが、香港にはもともと魚介類を生で食べるという食習慣や食文化はない。このような場所で刺身など生ものを食べるには、その料理を提供できるに値するレストランを慎重に選ぶ必要があり、一般的には中華料理店で刺身を食べるなどは絶対に避けるべきだと個人的には思っている。また、たとえ日本食レストランであっても、きちんと食品管理されたところでないと、食中毒の危険性が高いと考えたほうが無難だ。 香港から出張などで東南アジア方面に出かける人は少なくないが、どこもコレラ感染に関してはリスクが高い国ばかりだ。生水はもちろん氷にも十分気をつけたい。たとえコレラ菌が食物と一緒に体内に取り込まれても、健康であれば胃酸で除菌される。ところが暴飲暴食していると胃酸濃度が低下するため、コレラ菌は胃酸のバリアーを通過してしまう。小腸に達してしまえばコレラ菌は殺されることなく、やがて大腸に到達したとたんに爆発的に増殖して激しい下痢症状を引き起こす。 旅行後に激しい下痢が始まった場合は、躊躇することなく医師の診察を受けて欲しい。また受診に際しては、症状はもちろんのこと旅行先やその日程についても詳しく伝てほしい。

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食中毒予防

このところ「お腹を壊した」という話をよく耳にする。「お腹を壊す」と表現される病気は、少なくとも成人の場合、その多くが食中毒である可能性がある。もちろんお腹の調子が悪くなることは食中毒に限らないが、気温が一気に上がってくる今の季節以降は食品衛生に十分に気をつけなければいけない。 秋から春にかけての食中毒は「ノロウイルス」が原因となるケースが多い。ウイルス性食中毒はある意味防ぎようがないものであるが、初夏から秋口にかけての高温多湿の季節に流行する細菌性食中毒は、予防が十分可能である。 食中毒予防の3原則は、原因菌を「つけない」「増やさない」そして「殺す」こと。 1、原因菌をつけないこと原因菌が食品に付着することが食中毒発生の最初のきっかけとなる。調理者の手洗いを徹底することはもちろん、食品の保管に際しては、隣の食品同士が直接触れないようにしたり、生ものの汁が他の食品を汚染することがないように注意しなければいけない。 2、増やさないこと食中毒菌が存在するだけでは食中毒にはならない。感染可能な菌数に増殖してはじめて感染の危険性が生じる。たとえばスーパーで肉を買ったとしよう。スーパーの冷蔵庫から取り出した瞬間から外気温にさらされてしまう。冷房の効いた店内といえども20度以上あり、このときから食中毒菌の増殖スピードが早まる。さらに店外に出ると夏場は30度以上。食中毒菌は一気に増える。生ものは買物の最後にすること。スーパーではレジに並ぶ直前に冷蔵庫から取り出すこと。もちろんその後は寄り道をせず直帰して自宅の冷蔵庫に速やかに保管する。食中毒菌が増殖する機会をできる限り与えないことが大切だ。 3、殺す一般に食中毒菌は加熱することで死滅して、感染力を失う。食品内部までしっかりと加熱することがポイントだ。通常は食品内部が汚染されることはあまりないが、身近なところではミンチが危険食品となる。家庭で調理するハンバーグなどミンチを使う料理で食中毒が起きやすい。はミンチは肉に付着した食中毒菌が内部にまで入り込んで全体を汚染しているいる危険性が高くなるからだ。O-157が米国で初めて確認されたときの原因食品はハンバーガーだった。ただし誤解がないようにしたいが、大手のハンバーガーショップでは、米国でのO-157集団感染をきっかけに極めて厳格な食中毒予防措置をとっており、現在大手ショップのハンバーガーが原因で食中毒になることはまずないだろう。 黄色ブドウ球菌が生み出す毒素は耐熱性があるのでいくら加熱しても食中毒の危険性はなくならない。その意味では「つけないこと」「増やさないこと」が最重要となる。また低温であっても細菌は増殖するので冷蔵庫を過信してはいけない。最近は賞味期限を気にする人が多いが、これはあくまでも適正に保管されていた場合でのこと。特に缶やビンに詰められた食品は開封後の劣化が著しい。たとえ冷蔵庫で保管していても安心できない。 これからの季節は、ノロウイルス感染が減る一方で細菌性食中毒、なかでも腸炎ビブリオ中毒が増える。腸炎ビブリオは海にいる細菌で高温を好む。魚介類に付着して食卓まで侵入する。魚は真水でよく洗ってから調理するのが基本であるが、それを知らないで魚介類を扱って刺身や寿司を供している「なんちゃって日本料理店」も少なくないと思う。食中毒発生の危険性は高い。海外で寿司や刺身を食べる場合は、飲食店の信頼度を十分に吟味してからにしたい。中華圏では元々生ものを食べる習慣などなかったわけだ。そのことを頭の隅においておきたいのもだ。 食中毒の発生が最も多いのは一般家庭である事実を忘れてはいけない。これからの季節、食中毒予防に十分努めて欲しい。